みっしょん・いんぽっしぶる

その日私には4つのミッションがありました。

  1. 隣町にある総合病院に義父の薬を取りに行く。
  2. 年賀状を買う。
  3. 銀行へ行き、各種振り込みをする。生活費も少しおろす。
  4. くるみゆべしを買う。


ミッション1の現場である総合病院までは車で30分。受付をして処方箋を書いてもらって薬を受け取るまでいつもかなり待たされます。さらにこの時期はインフルエンザの予防接種でさらに混み合っていることが予想されます。


そこで私は考えました。

  • まず、病院に行き、受付を済ませ、処方箋を書いてもらう。
  • 処方箋が出て、薬が出てくるまでの待ち時間に近くの郵便局まで行き、そこで年賀状を買う(ミッション2完了)。
  • 年賀状を買ったあと、銀行のATMに寄り、お金をおろし、振り込みを済ませる(ミッション3完了)
  • 病院に戻り、薬を受け取る(ここでミッション1完了)。
  • 帰り道に和菓子屋さんに寄り、くるみゆべしを買う(ミッション4完了)。


スバラシイ。時間のロスを極力抑えて4つのミッションを遂行することが出来る、極めて合理的な計画です。待ち時間や往復にかかる時間を逆算すると家を出る時間は午前11時と出ました。早めに午前中の家事を済ませ、さっそうと愛車に乗り込み、まずはミッション1現場、隣町の総合病院に向かいます。


病院は思っていたほど混んでいなくて、受付後30分ほどで処方箋が出ました。ラッキー。この処方箋を薬局の窓口に出し、薬が出るまでの間にミッション2の現場・郵便局に向かいます。


さすが師走、郵便局の年賀状売り場には行列が出来ていました。オットに頼まれた分と私と義父の分の年賀状を買い、領収書をもらいます。よし、これでミッション2完了。


郵便局からミッション3の会場であるATMまでは歩いて10分ほどです。最近運動不足気味なので、車を使わずに歩いて行くことにしました。

ちょうどお昼休み時分だったので、2台のATMには長い行列が。ほんとにもうどこもかしこも混んでるわね〜と、おなかがすき始めてきたことも手伝い、微妙にイライラする私。10分ほど待った後、ようやく私の番になりました。


我が家の銀行カードの暗証番号「ABCD」をピコピコと入力します。ATMはしばらくジージーとなにか考えた後、「お手数ですがもう一度最初から操作してください」と私のカードを吐き出しました。


あれ? あ、そっか、このカードの暗証番号は「ABCD」じゃなかったんだ、なんだったっけ、あ、そうそう「AABD」だった......と思い直してまた入力。「お手数ですがもう一度最初から操作してください」とまたまた吐き出されます。え? また違うの? そっかそっか「AABD」じゃなかったんだ「ABBC」だったんだ、いやーど忘れしちゃったよ、ははは......と、またまた「ABBC」と入力。すると画面には無情にも「お手数ですがもう一度最初から操作してください」の文字が。いやーん、いったいどーなってるの??


私がもたもたしている間に、後ろの列はどんどん長くなり、イライラした客が「チッ」と舌打ちするのが聞こえました。わわわわ。小心者の私はその舌打ちのプレッシャーに負け、とりあえずその場を退散。


まいったなあ、カードの暗証番号忘れちゃったよ。仕方ない、オットに電話して聞こう――とバッグの中のケータイを取り出します。


ケータイ忘れたよ......


普段はめったに使わないのにどうしてよりによってこーゆー時に忘れるかなあ! と自分で自分に腹を立てながら、公衆電話を探します。しかし、最近は公衆電話ってなかなか置いてないんですね。うろうろ探し回ること10数分。そう言えばさっき年賀状を買った郵便局に一台公衆電話があったなあ、と思い出しました。うわ、これからまた10分歩くのかよ〜。


運動不足など気にせず、車を使えばよかった......と激しく後悔しながら郵便局まで戻り、オットに電話。正確な暗証番号を聞き出します。そうそう「AABA」だったんだ! 紛らわしい数字の配列だもんでいっつも混同しちゃうんだよ。よし、これでようやくミッション3に取りかかれるぞ。


と、今度は車でATMまで戻り、さらに長くなっていた行列に最後尾につき、辛抱強く待って、さていよいよ私の番。今度は間違えずに「AABA」と入力します。カモーン、現金!するとあろうことか、画面には「窓口にお越しください」というエラーメッセージが出るじゃないですか! ほわーーーい??? 窓口ったってここはATMだし! と焦ってインターフォンで連絡を取ると、どうやら、盗難・紛失カードの悪用防止のために違う暗証番号を3回以上入力すると自動的にカードがロックされる仕組みになっているとのこと。私が先ほどピコピコ入力し間違えたのをこのATMは「すわ、あやしいヤツ!」と認識し、カードが使用不可になってしまったのです。おーまいがーっ!


これから先はこのカードは使えません。新たに銀行に行き、再発行申請書に記入し、身分証明書を提出して再発行の手続きをしなければならないのです。新しいカードが手にはいるまでの期間は印鑑と通帳で出入金することになるのだとか。うへー、超めんどくせー。


どうするよ? ミッション3を終了するどころか、かえってコトを複雑にしてしまい、落ち込みまくる私。寒いし、お腹は空いてくるし、あちこち歩き回っていい加減疲れているしで、ほんとにもう泣きたくなりました。とにかく、一刻も早く家に帰ってなんか食べよう。それから今後の対策を立てよう。ああ、オット、怒るだろうなあ......。


( ´・ω・`) ショボーンとしながら、車に乗り込み、家路につきます。あああ〜、せっかく水も漏らさぬ完璧な計画だと思ったのになあ、なんかあちこち歩き回って待たされて、バカみたい......とマンションの駐車場に車を停めてハッと気づいたのです。


義父の薬、取ってくるの忘れた......


結局、その日私は、年賀状を買って、カードを失効させただけだったのです。しかも年賀状は焦眉の急ではなかったのです。家から歩いて5分の郵便局で散歩の途中ででも買えばよかったモノなのです。急ぎの用事をことごとく停滞させ、のみならずこの何かと物いりの時期にカードまで失効させてしまう私っていったい......。


案の定、オットには「使えないヤツ」という烙印をグリグリとおされ、しばらくは彼の冷たい軽蔑のまなざし耐えなければなりませんでした。しょうがない、今回は私が全面的にバカだったんだから。ほんま、ガキの使いやあらへんで。


というわけで、みなさん、暗証番号忘れには気をつけましょう。今後はこういうヘマをしないように、新しいカードが届いたら、暗証番号は覚えやすい生年月日にして、さらに念を入れてカード本体に油性マジックででっかく書いておこうと心に決めた私だったのです。


ちなみにミッション4はきちんと完了させていました。そういう点はぬかりない私。そのことがさらにオットの怒りを買ったのですが。