幻のロシア絵本展

ロシア絵本

東京都庭園美術館に「幻のロシア絵本展」を観にいく。去年、笠間の陶芸美術館で「ロシア・アバンギャルド陶芸展」http://www.nhk-p.co.jp/tenran/russia/russia.htmlを観て以来、「ロシア・アバンギャルド」ってかっくいい〜〜!と、興味津々なのだ。それにしても、笠間のこの展覧会はユニークだったなあ。企画したヒト、偉い。


「ロシア・アバンギャルド」芸術が花開いたのは革命からスターリン時代が始まるまでのほんの10数年足らず。この短い期間に、新しい国家、時代への夢と希望に満ちあふれた生き生きとした芸術作品があとからあとから生まれた。時代の追い風や「革命」の熱気が、若い芸術家たちを鼓舞し、実力以上の作品を作り出させていった。

「次世代を担う子供たちへの啓蒙」といういわば「国策」で作られ始めた絵本の数々であるが、さまざまな実験的な手法、斬新なテキスト、鋭い観察力に満ちている。作り手も受け手も、心から「革命」の理想に燃え、新しい時代への期待に胸をふくらませて、この時代を生きていたことがわかる。

革命の理想に燃えた幸福な日々は一瞬で終わり、スターリン時代が始まると、絵本を始め、すべての芸術が暗黒の「社会主義リアリズム」に堕していく。最初のきらめきがまぶしかった分、「アバンギャルド」以降の無味乾燥な作品群に接すると、ほんとうに暗澹たる気分になる。


現在の私たちは、自由な芸術活動ができる社会に(いまのところは)生きているけど、1920年代の「ロシア・アバンギャルド」勃興の時代のような、時代の追い風に乗った芸術の「勢い」みたいなものは「当たり前の自由」を享受しているだけの現在のアーティストにはちょっと得難いものなのかもしれない。