ザ・模合

実家から小包が送られてくると、隙間を埋めるためにガシガシつっこんである琉球新報やら沖縄タイムスやらの古新聞を広げて読むのが密かな楽しみ。私のささやかな望郷タイムである。

今日届いたポークの缶詰やウッチン茶と一緒に入っていた琉球新報には、こんな連載記事があった。



琉球新報 連載記事「ザ・模合」
沖縄各地の「模合」を取材し、主催している集団のパーソナリティを紹介したもの。


そもそも模合とはなんぞや?

模合――沖縄独特の金銭的相互扶助システム 「もあい」と読みます


広辞苑で調べたら載っていませんでした。ということは、「模合」と言う言葉は沖縄でしか通用しない単語だという事でしょうか???。


しかし沖縄では、例えば銀行に提出する書類なんかにも「模合」の金額を記入する項目がありますし、文具屋さんに行くと、ちゃんと「模合帳」も売っていて、ひとつの公認された制度といえます。


この模合とは、グループで毎回いくらか一定のお金を出し合い、メンバーがそのお金を一人ずつ順番に受け取っていく、というシステム。いわゆる民間金融で、そのお金は仕事の運転資金や家の補修、子供の進学などまとまったお金が必要な時に使われています。


いかにも横のつながりが強い沖縄ならではの風習で、昔から受け継がれている助け合いの精神=ユイマール精神の典型と言えるでしょう。


この模合も若い年代のグループでは、仲の良い友達が定期的に集まって飲んで騒ぐ「コンパ」的色合いが強くなっています。

明治以前の日本にも「頼母子講」など、似たような制度があったそうだけど、21世紀を迎えた今現在も、こんなプリミティブな金融制度がj実在し、盛んに行われているのは沖縄くらいじゃないだろうか。すごく前近代的よね。「部族」って感じ(笑)。


とにかくウチナーンチュは模合が大好きである。老若男女、誰でも模合の一つや二つ参加していると言っても間違いない。


模合は生まれ育った地域の小中高校の同窓会、部活のメンバー、職場、近所、親戚......という地元密着型の集団で行われることが多く、日本全国どこに行ってもすぐ「郷友会」をつくりたがるウチナーンチュのネットワーク精神を如実に反映している。どこに行っても同郷単位で集団を作り、結束するあたり、華僑に似ているな〜と思う。


私の父親は、小学校の同級生模合を30年近く続けていて、お金が貯まったらみんなで台湾旅行に行ったりしている。私の母はきょうだい模合。実の姉妹4人で一ヶ月5000円ずつ積み上げて、去年の秋はこの積立金で箱根旅行を満喫。弟の奥さんは、高校時代の同級生と模合をしていて、自家用車の車検の代金を調達したと言うし、地元に住んでいる私の同級生たちも、みんななにがしかの模合に入っている。


切迫してお金が必要だというわけではなく、要は、模合にかこつけてみんなで集まって飲みたいんである。だから、しっかりものの私の弟は「模合やると、飲み代の方が高くついちゃって結局赤字になるんだよ」という理由で、模合には入っていないようだ。


一回の模合で動くお金は5000円とか10000円くらいだけど、人数が大きくなればなるほど動くお金もでかくなるわけで、企業・業界が組織ぐるみでやっている模合が崩れると、何千万単位の損失で、新聞沙汰になったりするらしい。


きちんとした約款や契約を結ぶわけでもなく、ただ、なんとなく集まって飲んで食べて、ついでにお金を集めて銀行に預ける*1という、なんともアバウトであぶなっかしい制度だが、他のことに関してはテーゲー主義のウチナーンチュも、模合の不文律だけはきちんと守り、滅多なことで模合が崩れることはないという。沖縄は地縁血縁をなによりも大切にする信頼第一のヨコ社会。模合で不義理を犯すことはすなわち沖縄でのまともな社会生活から一生ハブにされることを覚悟しなければならないのである。なかにはサラ金で借金しても模合での積み立ては欠かさないという本末転倒な話も......


あ、そうそう、実家の母は、私の大学受験の費用も(浪人したので2回分)、当時の職場の模合で調達したと言っていたな。「あの模合、始まったばっかりの時にとったから、あとあとずいぶん難儀したよ〜。しかもあんた、浪人したでしょう。はーっさよ」と、今でも恨みがましく言われる。ごめんよ、母ちゃん、世話かけたね。


沖縄の模合事情を詳しく知りたい方はこちら→
http://www.u-r-u-m-a.co.jp/05oki100/04life/moai1.htm
http://www.culture-archive.city.naha.okinawa.jp/top/main/show_dinfo3.php?keyvalue=10050000

*1:沖縄の銀行にはちゃんと模合専門の口座があるという