涙のお買い物

必死の買い物

実家の母親と電話で話していて、
「あんた、相変わらず安物の服ばっかり買ってないで、もうちょっとお金かけてきちんとした格好しなさいよ!」と言われた。
なによー、確かに私はユニクラーだけど、ユニクロは安いけど、そんなにみっともない格好はしていないってば。


しかし、母曰く、35にもなってお手入れ簡単・丈夫で長持ちが取り柄の綿100%の服ばかりというのは怠惰もいいとこなんだそうだ。ウールやカシミヤなど、繊細な生地を使った、デザインなんかも凝った、ドライクリーニングじゃなきゃ洗濯できないような、そういう「手間のかかる服」を買えと。服の中身はそろそろ賞味期限切れなんだから、せめてラッピングに気を遣えということらしい。


ふん、大きなお世話よ! と言いたいところだけど、確かに、私のクローゼットはこの年齢の女性にしてはずいぶん貧弱と言われても仕方がない。そもそもヨソイキの服というのがほとんどない。ヒールのある靴ももっていない。さらにすごいことに、ストッキングも持っていないのだ! いつもは靴流通センターで買ったスニーカーにユニクロの靴下*1で十分間に合っている。


だいたいそんなに気の張る場所に出かける機会もないしさーと高をくくっていたのだけど、それにしても、近所のスーパーに行くのも、日比谷のシャンテで映画を見るのも同じ服装っていうのはいかがなモノかと、さすがに最近思うようになってきた。それに、バイト先のレストランにやってくるママ友グループとおぼしき集団などは、小さい子どもを抱えていて、いまが一番生活に余裕がない頃だと思われるのに、みんなけっこうかわいい洋服着てて、髪型もいつもきちんとしていて、それなりにおしゃれしている。私の普段着なんか、筑波大の体育会系の学生よりもがさつでビンボー臭いかもしれない。


ピーコのファッションチェックでも「綿の服を着て許されるのは20代まで!」って言ってたしなあ。やっぱそろそろなんとかしないとやばいんじゃないかしあ。顔やスタイルで勝負できる時代はとうに過ぎ去った。そろそろきちんとした格好をしていないと服装だけでなめられちゃうんじゃないかしら?


......等々、いろいろ思いあぐねて、「よしっ!『それなり』の服を買いに行こう! 普段着じゃなくてヨソイキの! ユニクロ以外の!」と一念発起、セゾンカードを握りしめて買い物に行った。


普通、私くらいの年齢の女性なら、時に応じてファッション雑誌などもチェックしつつ、フェミニンならこのブランド、キャリアファッションならこのブランド、というような分類ができていと思うのだけど、私はファッション方面の知識に関しては小学生以下である。そもそもブランドのロゴが読めない。un dix corsとか、iiMKとか、Perle Peacheとかって、いったいなんて読むのよ? HERMESを「ハーメス」と読んだ電車男を笑えない。


それになんといってもユーツなのが、高級ブティックに買い物に行くような服を持っていないってこと。ブラウス一枚2万3万するような店で全身ユニクロの格好で行けないでしょう。どう見たって店員の方が高級な人間に見えるし、もう雰囲気に呑まれちゃって萎縮しまくり。どんどん惨めな気持ちになってくるんだよなあ。あと、私は少々難アリスタイルなので、試着の際に「もう少し大きめのサイズありますか?」といちいち聞かなければならないのもつらい。ああ......考えれば考えるほどめんどくさいし憂鬱だ。だから洋服の買い物は嫌いなのよ。ユニクロはいいなあ。色とサイズがきちんと区分されているからなんにも考えなくても買い物できる。


泣き言ばかり言っていてもしょうがない。重い腰を上げて、「それなり服」を買うための試練の旅に行ってきましたよ。


ショウウインドウを眺めていて、ここなら私でも着こなせそう、それほど気後れしなくても買い物できそう、と睨んだのが、この店。普段着ぽくて着やすそうなんだけど、それなりにおしゃれ感もあって、ちょっとしたヨソイキには十分。守備範囲が広そうで、お値段もオンワード樫山グループの中では手頃なんじゃないだろうか。


おっかなびっくり入ったものの、何をどれくらい買えばいいものなんだろう、いわゆる「着こなしテク」なんて、ワタクシ皆無なんですけど......と、泣きそうな気持ちで物色していたら、親切そうな店員が、私の不安を見透かしたかのように上から下まで完全コーディネイトしてくれた。お客様くらいの背丈ならこのスカートなんかお似合いですよ〜、裾がふわっと広がるんだけど、お尻が大きく見えないんでとてもシルエットがきれいなんです。このスカートだったら、この色のブラウス合わせるとバッチリです。あ、そうそう、この靴、いますごく出てるんです。それから今年の流行りはこのメッシュのベルト。なんにでも合わせられるデザインなので一本持っていても損はないですよ。それから、このジャケットとパンツ、二つ合わせるとスーツになるんですけど、生地がストレッチになっているのですごく着やすいし、インナーさえ買えれば着こなしは無限です。あ、ほら〜お客さん、ぴったりじゃないですか〜。この色、お客さんにほんとに似合っていますよ。ちょっと待って、オレンジだけじゃなくて赤なんかも試してみたら? このインナーは色違いで持っていた方がバリエーション広がりますよ。あとこのカシミヤのアンサンブルなんかいかが? これは、普段着のジーンズにも合わせらますよ。それから、デニム生地がお好きだったらこの7分丈パンツ、かわいいでしょう?


等々、奨められるままに試着したおし、ああでもないこうでもないと色やサイズをとっかえひっかえすること1時間。フレアースカートとジャケットとパンツ、ブラウス2枚に、ベルトを選び(というより選ばされ)、ハッと気がついたら4万5千円分のカードを切っていた私。よ、よ、よんまんえーん。くらくらっ。


ここをお読みの妙齢の女性のみなさま、みなさんは「今日はちょっとおしゃれ着買おうかしら?」と思って買い物すると、どれくらい使うモンなんでしょうか。これだけのアイテムを買ってよんまんえんっていうのはやっぱり買いすぎですよね? 贅沢ですよね? とんでもないですよね? それとも、これくらいいのおしゃれ出費は普通なのでしょうか? こんなんでビビるほうがおかしいんでしょうか。


だって、四万円......。ユニクロなら1000円のシャツが40枚買える......ああ、そう考えたらマジで気が遠くなる......てゆうか、私、この店員にいいようにカモられたのカモ......


しかし、死ぬ思いで買ってきたお洋服。さすがにユニクロジャスコとは着心地が違う。ラッピングにちょっと金かけただけで、中身までほんの少しグレードアップしたみたいな気さえする。なんだかんだいってちょっとわくわく。明日はこの服着て映画でも観にいこうかしら♪

*1:ユニクロの靴下はどんなに履き倒しても全然くたびれず、破けない。さすが丈夫だ。スバラシイ