憤怒のさーたーあんだぎー

さーたーあんだぎー


昨日は午後いっぱいかかって揚げ物をしていました。作っていたのは沖縄名物さーたーあんだぎー。

 
知人宅で開かれるちょっとした集まりへの手みやげです。赤ん坊の拳くらいの大きさのさーたーあんだぎー、約40個。着ていた服がサラダ油臭くなりました。
 
ドラマ「ちゅらさん」にもしょちゅう出てきたので、すっかり全国区になったこのお菓子。「さーたーあんだぎー」とはヤマト言葉に訳すると「砂糖(さーたー)の油揚げ(あんだあぎー)」。つまり砂糖てんぶら。小麦粉と卵と砂糖をまぜて低温の油でじくじく揚げた沖縄版ドーナッツです。
 
写真でもわかるように、大きく割れ目がはいって揚げ上がっているのが特徴です。沖縄の多くの料理と同じく、これもルーツは中国。あちらでは「開口笑(カイコウシャオ)」と呼ばれているそうです。たしかに、口を開けて笑っているみたいな形ですよね。
 
材料も作り方もとても簡単なこのお菓子、写真のように、口を開けて笑っているようなきれいな割れ目をつけて揚げるのはけっこう大変です。コツはごくごく低温の油でじくじく揚げることなのですが、この油の温度と種の固さを見極めるのが難しい。慣れないうちは周りは真っ黒に焦げで中は生、という悲惨な出来損ないばかりが揚げ上がります。私も上手にできるようになるまでは失敗の連続で、温度計で正確に油の温度を測るようにして、ようやく及第点のものを作れるようになりました。
昔の沖縄ではさーたーあんだぎーが上手に作れることが花嫁の条件だったとか。 
 
さーたーあんだぎーは日持ちがするし、普通のドーナッツよりずっと固くて食べ応えがあるので、おやつだけではなく軽食としても十分。去年の夏の父の選挙の時は、支持者の方々が競うようにお手製のさーたーあんだぎーを差し入れてくれました。
 
沖縄の伝統的な作り方だと、揚げ油にはラードを使うらしいのですが、いまじゃそんな手の掛かることをする人はいません。私も普通のサラダ油を使い、粉は小麦粉とホットケーキミックスを半々にしたり、ゴマをまぜたり紅芋粉をいれたり、いろいろアレンジしています。
 
研究研鑽の甲斐あって今回のさーたーあんだぎーは会心の出来。見よ、このきれいなきつね色。チューリップの花のような見事な割れ目。沖縄県産の純黒糖を使ったので、こくがあってまろやかな甘味、味もサイコー!……の、はずです。ぜったいおいしいはず。
 
そう、私は現在ハードなダイエット続行中の身。お菓子は厳禁。しかもこれは油と砂糖という、二大タブー食品をふんだんに使っている、まさにダイエッターの天敵とも言えるお菓子なのです。
 
揚げ油の中でくるくる回転しながらきつね色に揚げ上がってくるさーたーあんだぎー……ほかほか湯気が立っているさーたーあんだぎー……きれいに割れ目がついたさーたーあんだぎー……、キッチン全体に拡がる黒糖と油の香ばしい香り……そう、さーたーあんだぎーは揚げたてを食べるのがサイコーなんだよ……
 
うおおおおおおお!! 理性も何もかなぐり捨てて、心ゆくまで揚げたてさーたーあんだぎーをむさぼり食いたい!胸焼けするまで食いたい! んもう、砂糖がなにさ、油が何さ、カロリーが何さ! 食ってやる!食ってやる〜〜〜〜!!
 
油鍋にかぶさっている間中、嵐のように胸を駆けめぐる激しい欲望。カロリーの悪魔がしつこく手招きしています。しかし、とこりはがんばった。油と砂糖の激しい誘惑に耐えながら40個を揚げ終わるまで、口にしたのは味見分の1/4個だけ。目に付くところに置いてあると理性が吹き飛んでしまう可能性があるので、すぐさまフタつきの容器に入れて封印してしまいました。はあはあはあ……。
 
今回のさーたーあんだぎーには、そんな私の心の血と汗と涙がぎっしりつまっているのです。みんな、心して食べるよーにね!残したら承知しないわよ!いいわね!

初出2003年4月10日「しゃべりたがる私」