「ハイスクール1968」

で、その「ハイスクール1968」だけど、超有名進学校で青春を送った著者の思想と感情の履歴書ともいうべき自叙伝。驚かされるのが映画・演劇・音楽・読書、そのすべてにおける広大な知識の蓄積量だ。高校生でこのレベルのモノを見聞きしてたの? 私が17歳の頃なんて聴いてた音楽はアルフィーで、一番好きだった小説は「ノルウェイの森」だったもんなあ。当時の若者のレベルが高いのか、現在の若者のレベルが低すぎるのか。それとも向かう方向が違うだけで、情熱の有り様は同じなのか。そもそもおつむの出来が違うのか。

卒業生の大半は東大へ進むという日本有数のエリート校だけあって、後に著名になった同級生も多い。最近あちこちで見かけるようになった気鋭の経済学者・金子勝と著者は同人誌仲間だったらしい。あと、当時流行していた高校生によるバリケード封鎖をめぐるエピソードでこんな記述も。

「青山高の英雄的闘争に連帯しよう」というのが、新左翼の高校生たちの合い言葉となった。10月から11月にかけて、わたしの通学している教育大駒場の周囲でも、駒場高から豊多摩高まで次々とバリケード封鎖の旋風が生じた。新宿高では三年生の一人が、封鎖された音楽室でドビュッシーを優雅に演奏していたという、まことしやかな噂が流れてきた。大分後になって、その生徒が坂本龍一という名前であったと、私は知らされた。