皇太子と三島由紀夫

最近読んだ本のなかで、おもしろかった箇所。

――(前略)当のおばさんはそんな事に少しも気づく気配もなく、ミッチーブームと言えば、と続けるのだった。「女性自身」で緊急読者アンケートというのをやって、それがこういうの、と、ワハハと笑い「もし世界中に男性が三島由紀夫と皇太子しかいないとしたら、あなたはどちらと結婚しますか?」と言い、あっ、それ、覚えてるよお、あたしの姉さんたちが騒いでいたよお、「女性自身」読んで、と、岡崎さんが目を丸くして答え、あれだよ、えーと、確か答えは、八十%以上の女の人が、「一生独身を通す」だったんだよ、当然だよねえ、と大真面目に答え、花子と私が、へえーっ、鋭い質問じゃないかあ、とゲラゲラ笑っていると、岡崎さんは、三島由紀夫と言えば胸毛が有名だったよ、それで胸毛なんだけど――(以下、句点なく続くので略)

金井美恵子「彼女たちについて私の知っている二,三の事柄」ISBN:4022642963

ミッチーブームとは、現在の美智子皇后が皇太子妃に選ばれたときの騒ぎのことだから、1959年頃、今から45年も前のことである。ここで言う「皇太子」とは現天皇のことね。

「女性自身」の設問もそうとう皮肉に満ちているが、寄せられた回答にも笑わずにはいられない。しかし、こんなアンケートとその結果を掲載するなんて、当時のマスメディアは、皇室・皇族に対してずいぶん客観的なスタンスをとっていたんだなあと思う。

現在の週刊誌でこんなアンケートできるかしら? たとえば「もし世界中に女性が山田花子紀宮しかいないとしたら、あなたはどちらと結婚しますか?」とかさ、SPA!あたりで? できないだろうな。