失意のカラス

昨日の日曜日は我がつくば市の市長・市議選選挙投票日だった。一週間の選挙期間中、普段は静かなこの街も、このときばかりはいたるところで街頭演説やら宣伝カーが走り回り、まあにぎやかだった。

そんなある日。
バイト先で同僚の女子大生と雑談していたら、店の窓から「よろしくお願いします、よろしくお願いします」と大音量で通り過ぎていく宣伝カーが見えた。


私 「あのウグイス嬢はヘタだよね。早口すぎるし、声が通ってないよ」
女子大生 「ウグイス嬢にもうまい、ヘタってあるんですか?」
私 「あるよ〜。気がつかない?」
女子大生 「全然。ウグイス嬢が言っていることとか気をつけてきいたことないもん」
私 「ふふふ。私の実家の父が地元で長い間地方議員をしていたから、私、20歳の頃からウグイス嬢やってたのよ。だから、ウグイスにかけてはちょっとうるさいわよ。ベテランだもん」
女子大生 「え〜〜! そうなんですか!? 宣伝カー乗ってたんですか?」
私「乗りまくっていたよ〜。街頭に立って演説している父の後ろで笑顔で手を振ったりさ。もう選挙にかけてはプロだよ」
女子大生 「わー、すごいなあ。いつ頃までウグイス嬢やってたんですか?」
私 「父の選挙の時はずーっとやってるよ。一昨年も帰省してウグイス嬢してきたよ。私が来なきゃ選挙にならないってみんな言ってる(自慢)。来期も父が立候補したらやるでしょうね。まあ、もっとも、今の私じゃ、ウグイス『嬢』じゃなくて、ウグイス『オバハン』だけどね。ウグイスっつーのも図々しいか、カラスオバハンとか」
女子大生 「わはは! カラスオバハン! 笑える〜!!」


「カラスオバハン」というフレーズがツボにはまったらしく、彼女、大爆笑。
私も思いがけずウケたのがうれしくて、
「あ、こらあ〜。そこ、笑うとこじゃないでしょ」
とわざと怒ったフリをして小さくげんこつを作って彼女の頭をこつんと叩くマネをした。そしたら、彼女、ハッと真顔になって
「あ、すみません、すみません、ほんと、ごめんなさい」
と何度も頭を下げる。


「あ、いや、別にあやまんなくても」
「ごめんなさい、調子に乗っちゃって。気を悪くしないでくださいね」


腹を立てたフリをしただけなのに、彼女はけっこう深刻に受け止めてしまったらしく、それから後の仕事中も、どことなく私の顔色をうかがっている様子。だ〜か〜ら〜、怒ってないってば。


感覚としては友達同士の軽口、ギャグのつもりだったんだけど、私よりひとまわり以上年が離れている彼女にとって私は友達感覚で軽口叩ける相手じゃないのか......。これからは年下に気を遣わせないように、こっちが気を遣わなきゃ。


てゆーか、そうやって気を遣われると、あ、「カラスオバハン」は私の場合、シャレになっていなかったんだ、って気づかされてかえって凹むんですけど......ガアガアガア