うちのカミさんがね......

ちょいと前、ketさん夫妻を我が家に招いて簡単な新年会パーティーをしたときのこと。
普段は手抜きしまくりのズボラ主婦のクセして、お客様をするとなるとやっぱり見栄張りたいので、気合い入れてお料理をして、デザートまで作っちゃって、テーブルクロスと箸置きまで用意して、お部屋に花なんか飾っちゃったりして、普段より5,6割おめかしモードでおもてなししていた。


その時のメニューの中にシーフードと水菜をわさびドレッシングで和えた簡単なサラダがあったのだが、彼らはこのサラダがいたくお気に召したらしく、うまいうまいと喜んで食べてくれて、「いやー、オットさん、幸せですね。こんな料理上手な奥さんがいて」などと、やたらもちあげてくれたのだった。正月だし、もちろんお年玉コメントだろう。私だって、ヨソに招待されたらそれくらい言う。でも、お世辞でもほめられると、やはりうれしい。


で、それを聞いたオットの反応はどうだったかというと。
「ほう」


......「ほう」? 「ほう」ってなんだよ、「ほう」って! それだけかよ!


私は精神の85%くらいが見栄でできているええかっこしいなので、自分に対する他人の評価というものが気になって気になってしょうがないタチである。特に、オット経由で入ってくる他人の評価には非常に敏感。「君の奥さん美人だね」とか「君の奥さん若いね」とか「君の奥さん料理上手だね」とか、そーゆーことを間接的に言われると非常にうれしいわけである。言われたことないけどさ。


この「間接的」っつーのがミソね。直接面と向かって言われるホメ言葉はお世辞度が高いので、半分くらいは割り引いて考えなければいけないが、間接的に漏れ聞こえる評価は、直接向けられるお世辞よりは、もうちょっと正直である。「あの人が君のことを○○○って言ってたよ」という評価、ものすごく気になりませんか? もちろん「○○○」の部分は「ホメ言葉」であることがもっとも望ましいわけだけど。


以前、オットが会社勤めをしていた頃、さーたーあんだぎーをたくさん揚げて「職場のみなさんでおやつに召し上がってください」と言付けて持たせたことがある。それからもう、私の脳内ではいろんな妄想炸裂である。


「これなあに? おいしいお菓子だなあ。君の奥さんの手作り?」
「わざわざ作ってくれたんだ。君の奥さん気が利くね」
「お菓子作りとかけっこう好きなの? 家庭的でステキな奥さんだね」
「そういえば君の奥さん、すごい美人なんだって?」
「性格も良いんだって?」
「ウエスト54㎝なんだって?」
「巨乳なんだって?」
「うらやましいなあ、このこのこの〜〜〜〜」


てな具合に同僚から冷やかされて、オットってば今頃「いやあ、それほどでも〜」なんて言いながら頭ポリポリかいている頃だわ。むふふ。ああ、オット、早く帰ってこないかな。どんなおみやげワード持ち帰ってくれるのかしらん? と、首を長ーーーくして帰りを待っていた。


帰宅したオットにさっそく
「ねえねえねえ? さーたーあんだぎー、どうだった? みんな、喜んで食べてくれた?」
とうきうきしながら聞くと、

「あ、うん、キレイになくなっていたよ」
という返事。

「そう? おいしかったって?」
「まずくはなかったんじゃない? なくなっていたんだし」
「誰も何にも言わなかったの? このお菓子どうしたの? とか、誰が作ったの? とか」
「いや、別に」
「『奥さんにありがとうって言っておいて』とか言う人もいなかったの?」
「あ、会社のみんなは君が作ったってことは知らないと思うよ。沖縄のお菓子です、って紙に書いて回しただけだから」
「はあ?????? なに?? 私のハンドメイドだって言わなかったの?」
「言わなきゃダメだったの?」
「ダメっていうか......じゃあなに、会社の人は、単なるお茶菓子としてもぐもぐ食べただけなの?」
「そうなんじゃない?」


もうね、アフォかと。私が何を期待してわざわざさーたーあんだぎーを揚げて持たせたと思っているんだろう。単なる茶菓子なら、その辺でえびせんでもカールでも買って持って行けばいいんである。ただお菓子を食べてもらいたいだけじゃなくて、嘘でもお世辞でもいいから「美味しいね」「上手だね」「ステキな奥さんだね」「美人だね」「スタイルいいね」とか、そーゆー付加価値を期待しているから、半日かけてせっせと作るんじゃないかあああああああ!!!! ほんとにもー、わかってないわね!!!


「だってさ、キレイになくなっていたんだからそれが『おいしかった』っていう証拠なんじゃない? 別にわざわざ口に出して言うほどのことじゃないでしょう」
「じゃあなに、あなたは、同僚に『君の奥さんステキだね』とか『料理上手だね』ってほめられたくないの?」
「ヤだよ、そんなの。こっぱずかしい。んな、歯の浮くようなお世辞聞いてたってしょうがないじゃん。それに、あんまりヨソで家のこととか自分の奥さんのこととか言いたくないし」
「そうなの? あなたはコロンボみたく『うちのカミさんがね』とかヨソで私を話題にすることはないの?」
「ないね。避ける」


そ、そうなんか。私の話はしたくないのか。なぜなぜなぜ? 興味ないの?
私なんか「とこりさんのダンナさんってどんな人?」って言われたら(言われなくても)嬉々としてあることないことしゃべりまくっちゃうけどなあ。そもそもこの日記だって半分くらいはオットネタだし。そして「あの人があなたのこと、○○○って言ってたわよ」という評価は必ずオットに伝えるし。


でも、オットにとっては「うちのカミさんが......」的プライベートな話は、できれば外ではしたくなんだそうである。なんだよ、プライベートを謎に包んで「ミステリアスな自分」を演出しようという魂胆かい? モテたいんかいっ?


でも、オットに限らず、所帯じみた話は外ではあまりしたくないっていう男性って多いよね。自分の配偶者や恋人のことについて聞かれたら「まあまあ、そんなことはいいじゃないですか」ととぼけたり、ひどい人になると「うちの愚妻が......」とか妙に欠点や悪口ばかりをことさらデフォルメしてして語ったり。やっぱり自分の手の内は他人に見せるな、色恋や家庭のことをオープンにするのはみっともないことであーる、というサムライ精神が根っこにあるのかしらね。


昨年、イ・ジョンジェが来日したときのインタビューで
「ジョンジェさんは、好きな女性にはすぐ告白する方ですか?」
と聞かれたジョンジェが
「私はすぐに告白する方ですね。私がいま愛している人は*1、ほんとうに花のように優しくて美しい人なので大事に大事にしています」
とさらっと答えて、会場を埋め尽くした私を含む女性ファンは全員「きいっっっっっ!」と歯ぎしりして悔しがったモノだった。しかし、後になって「ああいうことをさらっと言うあたりがステキよね」「かっこいいよね」「キム・ミニ、うらやましい!」と大絶賛だったのである。


ツマや恋人のことをヨソでべらべらしゃべるのはみっともない、そういうベタベタしたの、嫌いなんだよね。というメンタリティはわからなくもない。男性に限らず、女性にもそういう人はいる。でもさあ、「あの人が君のこと○○○って言ってたよ」とか「君の奥さんってどんな人? ってきかれたんで○○○な人です、って言っておいたよ」という、間接的に言われる様々な評価は、ああ、私って信頼されているんだ、愛されているんだと確認できてとってもうれしいものなのよ。自分から進んで「うちのカミさんってさあ」なんてベラベラしゃべれとは言わないから、せめて誰かに聞かれたときくらいは「いや、うちのカミさんってけっこういいヤツですよ」くらい言っておいてよ。アピールしてよ。お願いします。

*1:10歳年下の女優キム・ミニとつきあっているというのは周知の事実