おひるごはん

私のバイトが終わるのは午後2時。朝食は8時に済ませているので、この時間まで立ちっぱなしだと、1時過ぎたあたりから、猛烈におなかが空いてくる。バイト終了時刻の5分くらい前から「あと5分、4分、3分......」とカウントダウンして、終了と同時にすっとんで家に帰る。早くなんか食いたい〜〜!


私が帰ってくると、ずっと家で仕事をしていたオットが「おなか空いたね〜、お昼にしよう」と言う。ああ、オット、私の空腹をいち早く察してくれているのね。さすが以心伝心の夫婦だわ。
うんうん、お昼にしよう。で、何を食べよう?と聞くと、
「なんでもいいよ、とこりがラクに作れるモノで」
私の意見を最大限にくみ取ってくれるのだ。相変わらず優しいオットである。


その日は適当な買い置き食材が見あたらなかったので、
「おそばくらいしか用意できないけど?」と言うと
「あ、それでいいよ」
と言う。
「ザルにする?かけにする?」
「温かい汁そばの方がいいけど、とこりの都合のいい方でいい」
と、私の都合を考えて、汁そばが食べたいけど、敢えてざるそばでもいいと。あくまでも謙虚なオットである。


外は寒風。まだ2月。どう考えたってざるそばよりも汁そばでしょう。私も汁そばが食べたいさ。しかし、私はもうおなかペコリーノ、汁そばもいいけど、とにかく、いますぐ!いますぐ!なんか食べたいの! これからお出汁を引いて、おそばを茹でて、薬味を用意して......と、ざるそばよりもはるかに手間のかかる汁そばを支度するのはつらいんだよ......。


でもまあいいか、温かいおそばを食べよう。さあ、作るか......と、よっこらしょ、と台所へ向かうと
「簡単でいいからね!」
と、すかさずオットの私を気遣ったきめ細かいフォロー。


薬味もなんにもいれない、ほんとのかけそばにしちゃおうかとも思ったんだけど、せっかく食べるんならやっぱり美味しいほうがいい。鰹と昆布でお出汁を引いて、少しだけ残っていた鶏のもも肉に焼き目をつけて、めんつゆの中で少し泳がせて鶏肉のエキスを出す。薬味は斜めにざく切りにしたネギと、冷凍保存しておいたゆずの皮。少し固めに茹でたおそばに鶏肉とネギがちょうどいい頃合いに煮えた汁を張って、鶏南蛮そばにした。


ほかほかと湯気の立つ丼をふたつ、お盆に載せて食卓へ。2人そろっていただきます。


ずるるるる〜〜

とこり「あ、おそば、ちょっとゆですぎたかも」

オット「ううん、そんなことないよ」

ずるるる〜

とこり「このおつゆね、いつもの『にんべんのめんつゆ』じゃないんだよ、ちゃんと自分でとったお出汁なんだよ」

オット「ほほう。」

ずるるる〜

とこり「薬味にゆずの皮入れたんだ。いい香りでしょ」

オット「あ、ほんとだ」

ずるるる〜

とこり「こういう汁そばのときのネギは小口切りじゃなくて、大きめのざく切りにして、くたっと煮込んだ方がおいしいわよね?」

オット「そうだね」

ずるるる〜

とこり「ね? 今日のおそばおいしい?」

オット「うん、おいしいよ。はい、ごちそうさま」


食事の後には、きちんと「ごちそうさま」と言ってくれる礼儀正しいオット。
私が作った汁そばを残さず食べてくれる、頼もしいオット......。



てゆーか!!!


疲れて帰ってきてるんだから、たまにはあんたが昼ご飯作ってよ!


それから!!!


作ってくれないんだったら、せめて訊かれなくても感想くらい言えよ! もっと積極的に味わえよ! 


あ、食べ終わった後の丼は洗ってくれました。ありがと、オット。つゆを作った鍋とおそばを茹でた鍋とざるはそのままだったけどね〜。