心して食え

写真は「割合で覚える和の基本」ISBN:4140331712 を参考にして作った菜の花のからしあえ。
こうやってみると、なんてことはない、ただの青菜のおひたしに見えるでしょ? 菜っ葉を茹でて、生醤油かけて花かつおを振れば一丁あがり♪って思うでしょ? 私もそう思っていました。こないだまで。


実は、この「菜の花のからしあえ」、調理に40分かかっています。こんなシンプルな料理になぜそんなに時間がかかるのか? とりあえず作り方を見てみましょう。

  1. 菜の花は茎の固い部分を切り落として食べやすい長さに切る。塩少々を加えた熱湯でさっと茹で、きれいな緑色になったらすぐ冷水にさらし、堅く絞る。
  2. 鍋に合わせ地(薄口醤油、みりん、だし汁)を入れて煮立たせ、菜の花を加える。一煮立ちしたらザルにあげ、煮汁はそのまま冷ましておく。
  3. 2の煮汁が冷めたら練り辛子を溶いて加え、菜の花を30分ほど浸す。味を見て薄いようなら薄口醤油で調節する。
  4. 菜の花の汁気を軽く絞って器に盛り、煮汁を適量注ぎ、削り節をのせる。

野菜を茹でて冷やし、合わせ地の中でさっと煮立たせ、別に取り分けて、煮汁を冷まして、また浸す......どうよ、この手間! なにやら「道」めいた仰々しさである。角煮やシチューなど、メインのおかずだったら、それくらい時間がかかってもまあわかるけど、モノはおひたしである。どうしたってメインのおかずにはなり得ない、サブ、箸休め的お総菜。なのに、これだけの手間と時間をかけるんですよ。なんてまあ贅沢な料理なんでしょう。


茹でた野菜を合わせ地にどぶんとつけ込むだけじゃダメなんだろうか? すべての工程をきちんとこなさないと、料理として成立しないんだろうか? 味にどう違いが出るんだろうか? ......いろいろ突き詰めて考えるとわかんないことだらけだけど、でも、とりあえず、これだけの手間をかけると、「これは絶対に美味しいはず!」という揺るぎない自信みたいなものが生まれてくる。お出汁をとっている時間、煮汁を冷ましている時間、野菜を浸している時間、それらの時間の一分ごとにじわじわじわ〜とおひたしが美味しくなっていくようで、できあがりを待っている間、こちらの心持ちまでゆったりと豊かな気持ちになれる。


というわけで、ちょっと、そこのあーた! 今夜のおひたしはそんじょそこらのおひたしとは違うんだからね! 「学校へ行こう!」を見てヘラヘラ笑いながら食べてるんじゃないわよっ!