スケッチ


イスタンブールの靴磨き。この靴磨きの装置がまるで美術品のように優雅だった。私はボロボロのスニーカーを履いていたのだけど「マダーム*1、磨きますよ?」としょっちゅう声をかけられた。



イェミ・ジャミイの境内で。礼拝の前にお清め(アブデスト)をする人々。モスクの中の水道はアブデストのために独自のタンクを持っていて、断水の時でも絶対に水が出るようになっているのだそうだ。


こちらの本ISBN:4088646142 によると、アブデストの順序は

1.両手を洗う
2.右手で口の中を3回すすぐ
3.右手で花の中に水、左手で鼻をかむ
4.両手で顔
5.右腕〜左腕
6.頭(三回濡らす)
7.耳の穴とうしろ
8.頸の後ろ
9.右足〜左足

ということになっているらしい。ふう。

これだけの順序を毎日5回、雨の日も風の日も繰り返すのである。トルコはイスラム教国の中でもかなり世俗寄りで礼拝なんかしないよ! という人も多いそうだけど、さっきまでチャイ屋でヘラヘラおしゃべりしていた調子の良さそうなオヤヂが、お祈りの時間になったらジャミイに赴いて、真面目な顔でアブデストしていたのを見たりすると、この国の人々にとって「宗教」の重みは我々とは全然違うんだなあ......と思わずにはいられない。


この厳粛な光景を目の当たりにすると、アメリカ軍がコーランをトイレに流した、という例の報道に対するイスラム教徒の激しい怒りが、以前よりも、ほんの少しだけ理解できるような気がする。

*1:トルコでもギリシャでも呼びかけられるときは常に「マダム」だった。同じフランス語なら「マドモアゼル」の方がいいのに