嫉妬しない人々

で、「のだめカンタービレ」12巻読み終わったわけです。千秋真一は私のもろタイプであるからして、のだめとラブリーな雰囲気〜♪になってからは、んもう、のだめにメラメラジェラシーで1ページ読み進む事に鼻の穴が1㎜ずつ広がっていきましたわ。


だいたい、私、のだめみたいな天然ボケキャラって苦手なのよね。西村知美しかり、山口もえしかり。「ったく○○ちゃんはバカだなあ」って、相手のガードをゆるくさせる計算なんだろ? とどうしても邪推してしまう。計算ナシの、ホントの天然ボケだとしても、「私のボケでみんなが喜ぶ」っていうのをわかっていてボケてるような気がするからそれも面白くない。「天然ボケ=純真」みたいな図式があるけどさ、そんなのずるいよ。真面目にきちんと生きている私みたいな常識人(笑)がアホみたいじゃないですか! ちゃんと直球勝負してよね! ふんっ!


それにしても「のだめ」の登場人物ってほんとにみんな寛容だよなあ。とにかく「天才」と呼ばれる人々に対してとても寛容。みんな優しい。なんであんなに諦めがいいのかとても不思議。


小さな頃から神童の誉れ高かった千秋に対して、みんなが一目置いているのはともかくとして、のだめは、ついこないだまで落ちこぼれでやる気ナッシングだったダメ学生。そんな彼女のでたらめなピアノ奏法が、運良く「違いのわかるオトコのゴールドブレンド」みたく、違いのわかる人々によってその素質を見いだされ、周囲のたゆまぬ尽力によってその隠れた才能は見事開花、あれよあれよという間にパリ留学ですよ? しかもすべての費用はパトロンが提供。おまけについでに、女性のあこがれの的、エリート千秋のマンツーマンレッスンつきで、しかも、その千秋さまのハートまでがっちりゲットじゃないですか。なんというシンデレラ! ぎゃぽー!(←のだめ語)


はっきり言って、私がのだめのクラスメートだったら、絶対心中穏やかじゃないと思うんですよ。
こないだまで、なにもかも他人まかせだったダメ学生だったくせして、特に努力もしている様子もみられないのに、なぜか周囲の視線は彼女に集中。彼女のために様々な実力者達が物心両面からあれこれと手をさしのべてくれる。


なのにどうして私はいつまでもくすぶっているの? 私の方がずっとずっと真面目に努力しているのに。しかもステキな彼氏まで捕まえちゃって。なぜ彼女ばかりに幸運が訪れるの? 私にはいつ幸運が訪れるの? 私にあって彼女にないもの、それは何? そんなに彼女の才能って圧倒的なの? 私たちって一瞬にしてチリアクターズなの? なんでのだめばっかり?? ......と、この世の不条理を恨みますね。


努力では越えられない壁、っつーもんは確かにあるのかもしれない。けど、いままで自分が積み上げてきた時間や努力を、一瞬にして軽々と飛び越えてしまう才能を目の当たりにしたときに、どうして他の人々があんなに寛容になれるのかが私にはわからない。「すごいわね〜、のだめ、がんばれよ」になれるのかがわからない。みんな性格いいなあ。


のだめみたいなシンデレラガールがそばにいたら、私だったら絶対、「なんであなたなの? どうして私じゃないの?」ってギリギリ歯ぎしりして、地団駄ふんで、ライバルの失墜を暗くしつこく祈り続けますよ。私は嫉妬深くて有名な牡牛座ですから!


いまでこそ、「所詮、私はこれといって取り柄のないぐうだらダメ主婦ですから〜」とヘラヘラしているけど、若い頃は(今でも若いけど!!)笑っちゃうくらい自信過剰で、自意識過剰で、ギラギラしていて、他人を押しのけてまっさきに甘い汁を吸おうと必死だったもの。誰よりも注目されて、誰よりもちやほやされたかったもの。常に「誰かが自分よりいい思いをしてるんじゃないか?」「誰かが私を出し抜いておいしい思いをしてるんじゃないか?」とクンクン嗅ぎ回っていて、自分より恵まれていたり、ちやほやされていたりする人を見たり聞いたりすると、「ずるい!!」という言葉が真っ先に出てきた。


そのうち、分別がついてくるようになってからは、他人を押しのけて周囲の評価を得るためには、それに見合うだけの努力をしなくてはいけないということに気がついたんだよね。私は根拠のない自信や野望は人並み以上だったけど、「努力をし続ける才能」というものが決定的に欠如していた。努力するのはイヤだったし、真っ向勝負して負けて、失望するのがイヤだから、競争からイチ抜けして傍観者になることに徹するようになった。ほら、よくいるじゃない? テストでひどい点数とっても「これは私の本来の実力じゃない。勉強しなかっただけ。私は、やれば、できるんだもの。悪い点数とるのはわかっていたのよ、あえて勉強しなかったのよ」とうそぶいているヤツ、あれが私。
「負ける恐怖」に負けないこと、目標に向かって努力し続けること、それこそが一番大きな才能なんだけどね。


いい成績を取る競争、いい大学に入る競争、男の子にもてる競争、いい会社に入る競争、美人になる競争......こうやって列挙するといかにも浅薄で笑ってしまうけど、そのころはそれなりに必死だったし、いまでもそういう競争からドロップアウトした側の人間であるという根深いコンプレックスが常について回っていますよ、ええ。「なによなによ、みんなずるーい!」って思ってますよ。


いまんとこ、「のだめ」にはその才能に対する妬みやそねみなどのネガティブな要素はほとんど見られない。みんな心優しく千秋とのだめの才能の開花を見守ってくれている。そんなドロドロした部分がないからこそ、安心して「のだめ」ワールドを楽しむことが出来るんだけど、やっぱ、みんないい人だよなあ、いい人過ぎるよなあ、と思う。


モーツァルトの才能に憧れ続けて、自分の才能に失望し続けて、嫉妬して嫉妬して、燃え尽きてしまう「アマデウス」のサリエリや、努力と才能の狭間でもがき、苦しみ、それでも競争から降りることなく、真っ向勝負を挑んでくる姫川亜弓さんが、私は好きよ。戦い続ける人、頑張れ〜〜。


なーんて、いろいろ書きましたけど、のだめ、面白いです。感化されまくって、ここんとこずーっとBGMは棚の奥にしまい込んでいたクラッシックのCDです。24時間まるごとモーツァルト。さらに、ヤマハ「大人の音楽レッスン」ってレッスン料いくらかしら? なんて調べてたりして。



参考エントリー
http://d.hatena.ne.jp/sarutora/20050521#p1