暗い予感

イラクでまた人質事件。これまでの事例と違って、今回の犯行グループはいかなる交渉にも応じる構えをみせない強硬派だという。被害者が生きて帰れる可能性は低いとみられる。ただ一つ、自衛隊の撤退という選択肢を小泉首相がとれば、話は別だが。

イラク戦争の大儀なんてとうの昔に崩壊しきっている。このままイラクに駐留し続けていても満足な「復興支援」などとてもできる状態じゃないだろうし、自衛隊駐留地周辺に着弾、なんてニュースもすでに珍しくなくなってきている。このままだと自衛隊員に犠牲者が出るのも時間の問題だろう。そんなに大きな犠牲を払ってまでイラクに居続ける意味があるのか。人質殺されちゃかなわんからとか、災害復興で人手が足りないからとか適当に理由をこじつけて撤退すればいいのに。だいたい、兄貴のアメリカだって大統領選の結果如何によってはとっとと引き上げるかもしれないんだよ? 

撤退できない大きな理由は、アメリカとの強固な「友好関係」への義理立てなんだろうけど、アメリカってあーた、今回の地震災害に援助してくれた額が500まんえんですってよ*1。まんえんよ、万ドルじゃないのよ。ずいぶん薄情な兄貴じゃない?

今明らかになっている限りの情報では、拉致された男性は「旅行者」としてイラクに入ったらしい。
その情報が確かなら、彼の軽率さ、思慮の浅さは、厳しく非難されてしかるべきだろう。しかし、それは彼が幸運にも生きて帰って来てからでも遅くないはず。なのに、一刻一秒を争って舌なめずりしながら叩くネタを探し回っている人々がすでに大多数なのだ、この国は。

いま、まさに生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている人(と、その家族)に対して、迷惑なヤツだから助けなくていいとか、死ねとか、自己責任とか、自業自得とか、4月に起こった最初の人質事件の時のような、日本列島を揚げての、あのまがまがしい集団ヒステリー状態が再現されるのかと思うと、胸が苦しくなってくる。あのときに私が感じた恐怖や怒りは、まだ生々しく心に残っている。