西へ〜向かうぞニンニキニキニキニン♪

とうわけで、祖母の法要のため、今日から4日間、父の実家である沖縄県与那国島というところに行ってきます。
与那国島、フジテレビの「Dr.コトー診療所」の舞台になった島で、日本の最西端に位置します。沖縄本島よりも台湾の方が位置的には近いということで、海岸から肉眼で台湾が見えるそうです。


前に訪れたのは8歳の頃でしたから、ほとんど記憶はありません。今回が初めてみたいなモンです。羽田〜那覇〜石垣〜与那国 と飛行機を乗り継ぎ乗り継ぎ行って参ります。マイルたまりまくりです。でわ、行ってきます。


↓2003年7月4日更新の「しゃべりたがる私」で与那国島のことを書いています。

◆「Dr.コトー」の島
昨日から始まったドラマ「Dr.コトー診療所」。物語のロケ地は、沖縄県与那国島。私の父が生まれ育った島です。「与那国島がドラマになるんだってね」と電話したら、「そうなんだよ。みんな楽しみにしているよ」と弾んだ声で話していました。いくら沖縄ブームといっても、与那国島くらい「僻地」になると、全国に紹介される機会なんてそうそうありません。父のような与那国出身者や島民の喜びはひとしおでしょう。
 
台風の前日など特殊な気象条件が重なると、与那国島からは肉眼で台湾が見えるそうです。戦前は台湾・東南アジアとの貿易の玄関口として大変にぎわっていたとか。与那国の人々にとっては、那覇はおろか日本本土なんかより、台湾などのアジア諸国の方がよっぽど身近だったに違いありません。父は「与那国は最先端の国際都市だったんだぞ!」と、いつも威張っています。いまでもラジオ・テレビでは台湾放送が普通に受信できると聞きました。
  
日本最西端のその島に、私は一度だけ行ったことがあります。あれは、小学校の2年生くらいの時だったかな。沖縄本島から石垣島まで飛行機に乗って、石垣島からさらに飛行機を乗り継いでたどりつく与那国島。昔の船便は、かるく3日くらいかかったそうです。最近の沖縄ブームで、石垣・宮古久米島などのメジャーな離島には東京からの直行便の発着するくらいだけど、与那国島沖縄本島からの直行便もごくごくわずかな本数しかありません。日帰り観光は不可能で、しかも与那国〜那覇間の運賃と那覇〜東京間の運賃にはたいして差がない。だから、当然人の行き来も少なくなる。その交通アクセスの悪条件のため、沖縄ブームの渦中にありながら、与那国島は、観光地としての知名度はさっぱりあがらず、人口もどんどん減りつづけ、まさに「コトー(孤島)」状態。
 
こないだ帰省した時に父から聞いた話ですが、現在ではほとんど「秘境」と化している与那国島に、フラーリとないちゃー(日本本土の人)が流れ着くことがあるのだそうです。観光するでもなく仕事を探すでもなく今流行りの「沖縄移住者」というわけでもなく、ふらふらとあちこちさまよい歩いては、島のそこここにある空き家をねぐらと定め、いつの間にか住み着いてしまうのだそうです。仕事を見つけるわけでもなく、ただただそこに「居る」というだけのその様子はまさに「隠遁」。わざわざこんなところまでやって来るとはありゃ相当の変わりモンかワケ有りの人物なのだろう、と島の人たちは噂するのだそうです。
 
島の人たちはそういう隠遁者を、遠巻きに眺めながらもいつも気にしていて、「お腹空かせていないかねー? 病気していないかねー? だあ、ご飯の残りがあるから持っていって食べさせようねー」と、お昼ご飯の残りなんかを隠遁者が住む空き家に持っていって食べさせてやるのだとか。野良猫を共同飼育しているようなもんです。
 
あの島の人は、黙っていても食事を持ってきてくれる、という噂が各地の隠遁者間のネットワークで流れたのかどうか知りませんが、島にはいつしかそういう隠遁者がぱらぱらと増え始め、島の人々に「飼われて」(笑)いるのだそうです。そのうち、昔のヒッピームーブメントみたいに隠遁者コミュニティができたりしてな。
 
Dr.コトー」の中でのこの島は、与那国も沖縄もまったく関係のない架空の島として登場します。だって、泉谷しげる演じる島民は、「てやんでえばかやろめい!」ってべらんめえ口調でしゃべったりするし、吉岡秀隆演じる新任の医師が到着するやいなや「さっそくですが、これをお願いします」と死亡診断書を書かされたりする。沖縄やその周辺の島々の人々が「さっそくですが」なんていって仕事を任せる、なんてことはあり得ないと思う。なにはなくともまず、泡盛でしょう。与那国にルーツを持つうちなんちゅとしては、「沖縄エッセンス、与那国エッセンス」を感じられるのは景色のみ、というのは多少ガッカリですが、まあ、ヘンにリアリティを追求して中途半端になるよりはこっちの方が落ち着いて見てられます。NHKの「ちゅらさん」でのオーバーな沖縄ナイズや堺正章のへなちょこウチナーグチには閉口させられたものなあ。
 
それにしても、ドラマに挿入される島の風景のすばらしいこと! お土産やさんも巨大なリゾートホテル(本土資本)もなく、まだまだ観光地化されていない、手つかずの、無造作な自然が満載です。20数年前に行った頃はまだガキだったんで、景色の美しさなんて気にもとめなかったけど、こんなに美しい島だったのかあ。こんど帰省するときにはぜひ与那国まで足を伸ばしてみよう。
 
……てなことを思ったのは私だけではないらしく、与那国町の公式サイトの掲示板では、すでに「与那国行きたい!」の書き込みが多数。今年の夏には、ドラマに触発された観光客がわんさと訪れることでしょう。島の発展のためには喜ばしいことだけど、「隠遁者のユートピア」としての島の未来に、少々不安を感じてしまったりするワタクシであります。
 
与那国島。方言読みでは「どなん」。「渡り難し」の意味だそうです。