泉ピン子について考える

久しぶりに「はなまるマーケット」を見ていたら、トークコーナーのゲストが泉ピン子だった。このたび美空ひばりの追悼ドラマにひばりの母親役で出演したということで、そのPRと、3ヶ月で15㎏の減量に成功した自慢のダイエット法をあれこれしゃべっていた。


泉ピン子、昔は和田アキ子研ナオコと並んで、「容姿はちょっとアレだけど、お人好しで機転の利く、笑いのとれるいい人キャラ」という扱いだった。女優というよりも「にぎやかしのタレント」といったポジション。今で言ったら、柴田理恵とか久本雅美みたいな感じかな。


それが、いつの頃からか橋田壽賀子の寵愛を受けるようになってから、なんだかたいそうな「女優」になってしまい、「いい人キャラ」が次第になりを潜め、傲慢で頑迷な、ただの扱いづらいオバハンになってしまった。その常識はずれの言動がいくつかのスキャンダルにもなってたびたびワイドショーを騒がせたりもした。


確かに、彼女、ちょっと浮いている。勘違いっぷりが痛々しい。今回のはなまるマーケットでも、アシスタントの海保千里アナが「それではピン子さん直伝のダイエット食品をご紹介します」と前フリしたあと、準備に手間取り、2,3秒もたもたすると「ちょっと、あんた、遅いわよ! 生放送なんだから! パッパとしてよ、時間ないわよ!」
とせき立ていたのだけど、その物の言い方がとてもきつくてとげとげしくて、海保アナがビクっ!としたのが画面からありありと見て取れた。本人は「歯に衣着せない正直さ」や、ずけずけ言うことで逆に「親しみやすい自分」をアピールしようとしたのかもしれないけれど明らかに逆効果だった。司会の薬丸も岡江も微妙に引いていた。


その後も自分のダイエット法を視聴者に伝授すべく、食事の取り方、調理法、運動方法など事細かに紹介していた時も、「今はもうシャネルもちゃんと着られますので、私から洋服もらった人、すぐ返してちょうだい!」「このコントレックスっていう水を一日10本くらい飲むのよ。ちょっと、コントレックスのカイシャの人、これだけ宣伝してるんだから少しは送ってきてよ」だの、いちいち冗談とも本気ともとれないヒトコトを差し挟む。本人はユーモアのつもりかもしれないけど、その言い方はどうも押しつけがましく、どことなく底意地の悪さを感じさせて、するりと聞き流せないざらつきを感じた。この人、楽屋で、後輩や新人にこういう風にあれこれダメ出しして煙たがられているんだろうなあ......というのが容易に想像できるのだ。


「大女優だけど、エラソぶっていない気さくな私、でも、紛れもなく大女優なんだからね!そこんとこ、よろしく!」という、自己顕示欲のオーラがスタジオ中に充満していて、それがこのトークコーナーの雰囲気を実に寒々としたものにしていた。


「ずけずけ言い」「歯に衣着せぬ」が会話として成立するのは、会話の相手同士にしっかりとした信頼関係があってこそ。果たしてピン子は後輩・新人から信頼されているのか?慕われているのか?と想像すると、いや〜、単に長く業界にいて、バックにえらい人がついているから誰も文句は言えないっていうだけで、彼女のことが好きでつきあっているっていう人はあまり多くないんじゃないかという気がヒシヒシとする。えなりもきっと彼女のことは嫌いだと思う。


話の端々に「橋田先生が」「石井ふく子セ先生が」「生前かわいがってもらった美空ひばりさんが」「大先輩の森光子さんが」等々、大物の名前をちらつかせて自分の権威の補強しようとする様が、最近の和田アキ子に通じるものを感じてとても不愉快だった。



昔、ちょっと涙もろくて、大きな口を開けてガハハと笑って、自分の三枚目っぷりに一生懸命だった頃の泉ピン子を、私は決して嫌いではなかったので、昨今の成金っぽい大女優的言動は「ああ、月日と名声は人間をこんなにも変えてしまうのね......」と、つくづく感慨深く寂しいものを感じる。いい歳のとりかたしてないよなあ。


ただ、番組の中で、ちらっと流れた出演ドラマの予告編を見て「この歳になってほんとにいい作品に出させてもらって、ほら、このシーン、すっごくいいところなのよ。ああ、予告編だけで涙出てきちゃう......」といきなり泣き出したのには驚いた。出演したのドラマの予告編を見て泣く......ものすごい感情移入っぷりである。ひとつの作品への集中力の高さ、仕事への飽くなき執念が、彼女を曲がりなりにも「大女優」に押し上げてきたのだなと思うと、そこはやはりさすがだと思わずにはいられない。


Σ(゜□゜;ハッ
なぜ、私はこんなにも長々とピン子について語っているのだろう? 生まれて35年、これほどまでにピン子のことを考えたのは初めてである。なぜだ? 全然これっぽっちも興味ないのに。


要するに何が言いたいのかというと、どんなに大女優になってお金持ちになっても、3ヶ月で15㎏痩せても、
ピン子にシャネルはちっとも似合ってませんから!
ということなのだ。私がココ・シャネルなら、「その服、脱げ〜」と枕元に化けて出てやる。