杉村太蔵

最近、なんと言ってもムカついたのが、杉村太蔵という棚ボタ議員の言動だろう。
あちらこちらでさんざん語り尽くされているけど、
「料亭行きたいっすよ!」だの「年収2500万ですよ!?」だの「国会議員はグリーン車乗り放題!!」などなど、ケーハクそのものの発言を繰り返し、新人議員としては異例の「謝罪&所信表明演説」をやらかしたお騒がせヘラ男である。


いやね、憎めないキャラだと思うよ。絵に描いたようなお調子者。私も同じエキスを持っているから、彼の舞い上がりっぷりはよくわかる。そりゃ浮き足立つよね、はしゃいじゃうよね。バイト先の同僚なんかだったら「あの人、バカだよね〜」「まーた余計なこと言ってるよ」と、話の種になるくらいの、にぎやかし要員。飲み会やコンパなどで本領を発揮するタイプかな。


しかし! あくまでも、バイトや飲み会やコンパに限っての話である。
こいつ、自分の立場、わかってるんか? 降って湧いたような僥倖で国会議員になって、テレビにむけて言うのが給料や料亭やグリーン車かよ。


なにより情けないのが、世の多くの人々が「タイゾー君、いいよね。応援するよ」「いいじゃない、素直で」「若いんだからもっとのびのび発言すべき」などと、彼の軽佻浮薄な言動に好感を抱き始めているらしいということだ。


あのさあ、国会は宴会やコンパのノリとは違うでしょうが。面白ければいいの? 26にもなって公に向かって言うべきコトとそうでないことの区別もつかないようなヘラ男の「2500万」は私たちの財布から出てるんだよ?


「ああいう型破りな人間の方がいい政治家になる」「若いんだから多少暴走もするよね」とかいう街の声があったけど、あれは型破りなんかじゃない。若さゆえの暴走でもない。そんじょそこらの保身オヤジと大差ないじゃないか。オヤジと違うのは、人前で言うべきコトとそうでないことの区別すらついていないアホだというところだけだ。オヤジ並のスノッブさに小学生並みの知性。


「上の人」の言うことを聞いて、拍手して挙手さえしていれば、料亭に行けて2500万円もらえて、グリーン車乗り放題なんでしょ? サイコーっすよ! オイシーっすよ! 120%コイズミチルドレンですよ! なんて発言には、若さゆえの過激さとか反骨精神とか理想とか野心とか、そんなのみじんも感じられない。


こないだの「謝罪&所信表明記者会見」で「自分はたくさんのバイトを経験してきた。だからニートやフリーターの気持ちがよくわかる。これからはフリーター対策に力を入れてやっていきたい」なんて言っていたけど、当選して真っ先に議員年収を調べたり、料亭やグリーン車のことで頭がいっぱいなるような人間が、ほんとうにフリーターの気持ちなんかわかるもんか。どうしたら人よりおいしい思いができるか、ラクできるか、そんなことしか考えていない甘ったれのボンボンだ。


この10月、介護保険制度が「見直し」になった。週に2回デイケアを利用している義父の施設利用料がグンと跳ね上がった。明細表を見て、一瞬目を疑ったよ。我が家は、今は子どももいないし、さしあたっての生活は割と安定している方だと思うけど、それでも「うへー、きっついなあ」と嘆息してしまうような内容だった。娘を夜間保育にあずけて働いている私のいとこは、夜間延長料金が大幅に値上がりしたので(30分ごとに延長料金をとられるのだそうだ。カラオケか)、「私のお給料、全部保育費よ......」と肩を落としていた。沖縄の実家には障害を持つ家族もいる。障害者自立支援法の成立は時間の問題である。障害者を抱える世帯、老人を抱える世帯、幼い子ども抱えて育児と仕事の両立に悩む母親たち......彼らの負担はこれからますます増えるはずだ。この現状に、みんな不満はないのだろうか。覚悟はできているんだろうか。


痛みを伴う改革」の「痛み」の矛先は、現在、子どもや老人や障害者に向かっている。彼らの声はあまりにも遠く小さいので、どっか他人事のような気がしてしまうけど、この鈍感な私でさえ、「これってヤバイんじゃないの?」と思ってしまうくらいあからさまだ。30分の延長料金に四苦八苦している人がいる中で、医療費や介護費がどんどんつり上がっていく中で、あんなヘラ男に2500万円くれてやって、グリーン車乗せてやっても腹立たないのか。みんな心が広いなあ。


「120%コイズミチルドレン」と公言している、このヘラ男が拍手したり、挙手したりするだけで、医療費が跳ね上がり、介護や育児の現場はどんどんキツキツになり、イラク派兵がどんどん延長され、憲法が改正され、そのうち徴兵制や治安維持法復活、なんて動きになっても「あの人面白いよね」で笑っていられるのだろうか。私はイヤだよ。今のニッポン、アホをおもしろがって観察していられるほど余裕ないと思うけどねえ。