リアルセレブと同席!!

冬の寒さにも、靴擦れにも、ノロウィルスにも負けず、しぶとくゴロゴロ唸るお腹をビオフェルミンでなだめつつ、超楽しみにしていたオペラ「魔笛」観劇のために新国立劇場に行って参りました。


魔笛」は私が初めて買ったオペラのCDでした。モーツァルト最晩年の最高傑作。ストーリーは完全に破綻しているけど、破綻しているだけにお堅い理屈や知識なしにただただ「楽しい〜♪」と身を任せていればいいだけの極楽オペラ。映画「アマデウス」でも死に瀕してボロボロになったモーツァルトが鬼気迫る表情でこの上なく軽やかな音楽を指揮している場面が印象的でした。

名曲ずくめのこのオペラ、特に超絶技巧の限りを尽くした夜の女王の2曲のアリアはぜひとも生で聴いてみたかった。こんな声、ほんとに人間が出せるの? なにか機械で加工してるんじゃないの?と半信半疑になるくらいすごいんですよ、夜の女王のアリアは。


初めての新国立劇場。2階のドア側というかなりお安い席だったのですが、舞台全体がきちんとみわたせて音の臨場感も十分。お値段の割にはお得な席よね〜と友人と話し合っていたのです。


何百回も聴いたけど、何度聴いても胸がわくわくする序曲と同時に幕が開き、いよいよ「魔笛」ワールド展開。タミーノもパパゲーノもパミーナもそれぞれ情感たっぷりでルックス的に「?」という部分もなく(オペラシロートにはキャストのルックスはかなり重要)、小林幸子のような衣装でどどーんと登場したお待ちかねの夜の女王のアリアは、それはそれはそれはそれは素晴らしく、一音も聴き逃すまいと息を止めて聴きいっていました。頭のてっぺんからつま先まで鳥肌が立ちました。


あっという間に1幕が終わり、「いや〜やっぱりすごいね」「マイクなしであの声! いったいどうなってるの?」と興奮さめやらぬまま友人とぺちゃくちゃおしゃべりしていたら、我々の席のすぐ近くで「おおおおっ!」という大きなどよめきが起こったのです。


なになに? と振り返るとなななんと、あのお方のお出ましだったんですよ。リアルセレブですよ、ちょっと奥さん、誰だったと思います??


美智子皇后ですよ。


事前にそんなアナウンスはなかったのでまさにブラインドゲスト状態。もう会場中が大騒ぎ。しかも美智子皇后、私の席の7つくらい隣に座ったんですよ。同じラインですよ。ほとんど同席ですよ。私たちの席って「セレブ席」だったのね! 


私はこの日の日記で

このままいくと来年あたり、春の園遊会に呼ばれちゃったりしてるのかもしれません。

と書きましたが、園遊会に呼ばれるどころじゃありません、美智子皇后の方から私の方へ来ましたよ。いわば私が呼んだといっても過言ではない。いや、それはさすがに過言か。


美智子皇后もオペラ好きなんでしょうか。せっかく私と同席できたのに、2幕からしか見られないとはなんともお気の毒。だってだって、「魔笛」の見所は第1幕に集中しているのに。両脇にはプロレスラーみたいな屈強なガードマンががっちりガード、その回りを劇場関係のお偉いさんが2重3重に取り囲んでいてものものしい雰囲気。リアルセレブは大変だなあ。


皇后と同席ということで、かなり舞い上がってしまったワタクシ。普段なら舞台そっちのけでよそ見ばっかりしているところでしょうが、そこはさすがモーツァルト。2幕が始まって10分もすると美智子皇后のことはすっかり忘れて、また「魔笛」ワールドへしっかり引き戻されました。


ああ、どの曲も楽しかったけど、とくに早口のモノスタトスが歌う「誰だって恋はするさ」がすごくよかった! 終盤近くになって出てくる「パ・パ・パ・パ」でおなじみのパパゲーノとパパゲーナの2重唱も聴いているだけで笑顔になってしまうくらい楽しかった。幻想的で重厚な舞台装置もよかったし、キャストの衣装もどれもすてきだった。ああ、どれもこれも書き尽くせないほど楽しくてすてきだった。堪能した。大満足。


私はいままでクラシックコンサートで「ブラボー!」と叫ぶ人のことを「けっ!なーにが『ブラボー』だよ、おめーはイタリア人かよ! 『ブラボー』って言いたいだけちゃうんか」と小馬鹿にしていたのですが、カーテンコールの嵐のような拍手の中、周囲の人々が口々に「ブラボー!!」と叫んでいるのに引き込まれて思わず「ブラボー!」と言ってしまいました。いや、ほんとは「ブラボー」より「ありがとう!」と叫びたかったんだけど。ほんとにこんなに楽しい思いをさせてくれてありがとう!


リアルセレブ美智子皇后もブラボーと叫んだかしら? 終演後、いつもの美智子スマイルで私たちに軽く手を振って屈強なガードマンにしっかりガードされながらしずしずとご退席遊ばされたけど、サーヤも嫁いでしまうし、雅子さんは相変わらず具合悪いみたいだし、さぞかし物憂い日々を過ごしていることでしょう。この日の「魔笛」で少しは気が晴れてくれるといいですね。モーツァルトにはその力があるはず。だってほら、私の腹具合もすっかりなおったもの。ノロウィルス退散です。


美智子さん、「魔笛」、楽しかったわね。またご一緒しましょうね。今度は「ドン・ジョバンニ」なんかいかが?