人間の照明

夕食を済ませ、お皿を洗って拭いて、レンジ周りを磨いて、ゴミの処理をして、一日の家事が一段落ついた後の私のお楽しみが「夜のうっとりティータイム」。リビングの照明をおとして、お気に入りのアロマオイルをキャンドルで温めて部屋中を香気で一杯にして、ショパンノクターンかなんかをBGMにして、おいしいハーブティーをいれて、静かなリビングでひとりでゆったり......。ああ〜疲れが取れるわ〜イイ感じに脱力〜。てゆうか、あんた疲れるようなこと何にもしてないじゃん! 一日中脱力してるじゃん! というつっこみが聞こえてきそうだけどそれでも、一日の終わりの私の至福の時なのです。


ところが、そんな私のささやかな楽しみを妨害するヤツが。
我が家のドケチ主夫・オットです。


我が家のリビングは、蛍光灯&白熱灯の2種類の照明を使っています。私は蛍光灯の「隅々まで照らしまっせ!」という緊張感のある光が嫌いなので、現在のマンションに引っ越した折、家の照明は全て白熱灯で統一するつもりでした。しかしネットで「白熱灯の電気代は蛍光灯の3倍かかる」という情報を見つけたオットが
「白熱灯なんか使ったら破産する
と言い張り、ケンケンガクガクの議論の結果、
「リビングでは『白熱灯色の蛍光灯』を使う」
「食事の時には蛍光灯と白熱灯のダブル照明にする」
という折衷案に落ち着いたのでした。


でも「うっとりティータイム」の際は、私はもちろん白熱灯を使います。白熱灯のぼんやりとした温かい光が、我が家の狭いリビングから生活臭を拭い取ってくれるもの。薄暗さあってこそのリラックスです。ほんの一時間くらいのことだしね。


ところが、ちょっと油断してトイレに行ったり歯を磨いたりしていると、オットがすかさずリビングの白熱灯を消して蛍光灯にチェンジしてしまうのです。

「ちょっとお、なにすんのよー。せっかく私がうっとりゆったりしてるのに。一気に雰囲気が所帯じみちゃうじゃないのよ! 私のリラックスタイムのジャマしないでしょ!」


と文句を言うと、


「いや、今頃とこりがリビングで白熱灯を付けているのかと思うと、電気メーターがぐるぐる回る音が聞こえるようで、心臓バクバクしてきて、いてもたっても居られなくなるんだよ。食事の時に白熱灯使うのは我慢するけど、それ以外の時間にまで白熱灯使うのは勘弁してくれ。どうしても薄暗い部屋がいいのならせめてろうそくにしてくれ。命が縮まるから


オットの懇願にも関わらず私は頑として白熱灯を使い続けていますが、そうするとオットは
「とこり、もう11時だよ? もう寝たら? お茶は飲み終わったんでしょ?」
と必死に私を寝床に追いやります。どうしても白熱灯を消したいみたい。


おかげで私のリラックスタイムのはずが、いつオットに消灯されるかと戦々恐々、うかつにトイレにも行けません。なんといってもオットは「命がけ」なんですから。就寝前の憩いのひとときが世にもせこい夫婦バトルに成り下がり〜。