健康とデザインの攻防

さて、ただいま「健康増進フェスティバル開催中」の我がオット。アーリーバード大作戦はすっかり軌道に乗ったようで、雨の日も風のひもゴミ袋片手にマンション周辺を歩き回り、散歩をかねた周辺美化に余念がありません。そのうち新聞の地方欄に「健康作りはゴミ拾いから。つくば市の夫婦が実践中!」なんて囲み記事が出るかもしれません。


生活サイクルの改善のあとは、そう、食生活改善。オットは
「やはり健康のためにはジューサー買わなきゃダメだ。ジューサー欲しい」
と言い始めました。ジューサー? なんでまた?


オットによると、現代人にとかく不足しがちな野菜類。成人が一日に必要な野菜類の量は300グラム。緑黄色野菜100グラム、淡色野菜200グラムを目安に5〜7種類なんだそうです。中年期にさしかかった我々、意識してこれらの野菜をとらないと、新陳代謝が悪くなり、いろんな弊害が起こるのだそう。300グラムって結構大変よ。しかも5〜7種類もの野菜をそろえて料理するのも大変。夕食におひたしとサラダと野菜炒め作るくらいの勢いじゃなきゃ。だから、固形で摂取せずにエキスのみを絞ったジュースにするのがいいんだって。だからジューサー欲しい。


「そりゃあ、私だって、野菜はたくさん摂るに超したことないと思っているわよ。成人病気になるしね。でもだからって、なにもジューサー買わなくても。市販の野菜ジュースを買ってきてごくごく飲めばいいじゃない? いま美味しいのがいっぱい出てるよ。あとビタミン剤なんかで補給するとかさ。」


と言ったのですが、にわかウンチクたれ男君になったオット曰く、それでは効果薄なんだそうです。野菜や果物というのは、カットして空気に触れた瞬間から酸化が始まって栄養が破壊されるのだとか。市販の野菜ジュースなどは製造して日にちが経っている上、防腐剤や保存料も入っているので、栄養摂取という観点から見るとしょせん気休めにしかならない。やはり新鮮な生野菜を使って自分でジュースを作って絞りたてをごくごく飲まなければ! だからジューサー欲しい。


「あ! 忘れていたけど、うちにはミキサーがあるよ。ポタージュ作るときにいいかなと思って3年前に買ったんだけどほとんど使わなくてお蔵入りしてる。あれを引っ張り出してくるよ。野菜や果物と豆乳なんかをミキサーに入れてガーってやれば食物繊維満点のフレッシュジュースになるでしょ?」


と私が言うと、ウンチクたれ男は、
「ちっちっち。ほーら、それこそがニッポン人が陥りやすい迷信なんだよな〜」
などと言います。なんでも、ミキサーを使って高速粉砕したジュースは、植物の細胞壁細胞壁・細胞膜が破壊されて、酵素の働きで自己消化されてしまうのだそうです。それに、ミキサーで作るどろっとしたジュースは飲みづらく、毎日続けるのはかなりつらいのだとか。その点、遠心分離の法則で果汁のみを搾り取るジューサーだと酸化もせず、さらっとした飲みやすいジュースができるのだとか。だからジューサー欲しい。


手作りジュース教の教祖になった感のあるオットがネットで情報収集したところによると、もっとも高性能で野菜の栄養分が過不足なくとれるジューサーはこれなんだそうです。


「低速回転圧搾式ジューサーKEMPO(ケンポ)」


げげっ! なんすか、作業用ロボットのようなごっついデザインは。しかも重さ6.2kgって、でかっ!
しかもお値段は、定価106,000円のところを特別価格の78,500円でご奉仕されちゃってるし! ななまんはっせんごひゃくえん?????? あーほーかー!!


その次に出してきたのがこれ。


「イキイキ酵素くんNEW楽々モデル」



これなら安いよ、消費税込み・送料サービスで32,550円! 
あら、三万円台? これなら安いわね〜
って、安くないわいっ! てゆうかこのデザイン、どうにかならんのか。バズーカ砲みたいじゃん。


そりゃあこれだけ払えば、最高の品質の最高のジュースが作れて、むちゃくちゃヘルシーだろうけどよ。こんなでっかくてダサダサデザインの機械が私のオサレキッチンにどかっと置かれるわけ? 絶対ダメ! 自慢じゃないけど、私はキッチン用品のデザインだけは相当こだわっているんだから。おフランスやおイタリアのものばっかりなんだから。オープンキッチンでリビングから丸見えのキッチン。いやでも目につくところに配置するキッチン家電は機能よりも見た目重視。いくら健康によくてもこの値段&デザインはとうてい許容範囲を超えている。絶対ダメ〜! もしどうしても欲しいのなら、あなたの部屋に置いて、あなたが作って、あなたが飲んで、あなたが洗って、あなたが片づけて!


と私が強力に反対したので、さすがのオットも引き下がり、じゃあこんどアキバのヨドバシカメラ行ってどのメーカーのがいいか見てみようということになりました。で、ヨドバシ行って見てきたんですけど、私は常々思っているのですが、国内メーカーの調理家電デザインって、どうしてこうもとほほなんでしょうか。多機能なのはいいけれど、色が妙にファンシーなパステルカラーだったり、でっかい文字でボタン機能がずらずら書いてあったり、変なイラストがついていたり。さすが家電大国ニッポンだけあって、多機能でお値段や大きさも手頃なんだけど、いかんせんデザインが......。このちゃらちゃらしたデザインの機械を毎日毎日見続けなければならないのは、キッチンをこよなく愛する私にはどうにも許し難い。却下却下、やっぱりジューサーは却下。カゴメの充実野菜飲んでなさい。それがイヤならにんじん丸かじりしてりゃいいでしょ?


とケンケンガクガクの議論の結果、
「このデザインならとこり的にもOKなんじゃない? 値段もまあまあだし。これをキッチンに置かせてもらえるのなら、ジュース作成準備、製造、後かたづけまでぜーんぶボクが責任を持ってやるから。だからこのジューサー買おうよ!」


と、妥協案としてオットが持ち出してきたジューサーがこれです。
Vitantonio ジュースエクストラクター PJE-3000


いままで、ななまんえんだとかさんまんえんだとかバズーカ砲やらパステルカラーやら見せられて感覚がおかしくなっていた私は、思わず
「うん......まあ......これなら、許容範囲かも......。ビタントニオはワッフルメーカーも持ってるしね」
などと妙に納得してしまい、ついついGOサインを出してしまったのです。


そして先週。我が家に、オットの激しく希求するところの健康増進ジュースを作るべく、ビタントニオのジュースエクスタシーじゃなかった、ジュースエクストラクター君がやってきたのでした。



誰も読みたくないだろうけど、この話続く......