干渉希望

毎回髪を切りに行っている美容室で「LEON」を置かれるようになってから、「俺もぼちぼちチョイ悪エッセンスを注入しなければなあ」と思ったのかどうか知りませんが、オットが「よく考えたら、仕事用と家用の中間の服がなさすぎなんだよね」と言い出しました。


仕事柄、人前に出ることが多いので、ネクタイファッションは割と持っていて、季節ごとにネクタイやシャツを買い足したりしてこまめに在庫管理しているようですが、仕事から帰ってくるといきなり「全身全霊ユニクロ」になってしまいます。寝間着はユニクロジャージで、外出する用事がなければほぼ一日中そのユニジャーで過ごします。ちょっと近所の本屋へという時ももちろんユニクロのチノパンにユニクロボタンダウンシャツ、靴下もユニクロ、靴もユニクロ、アンダーシャツもパンツももちろんユニクロ。本屋の帰りにラーメン食べに行って口の周りを拭くハンカチもユニクロです。


まあ、どうせたいした用事もないんだし、全身全霊ユニクロでも全然問題ないのですが、もういい年なんだし、おしゃれマダムな私がジャスコのハイセンスなファッションで決めているのに、オットがユニクロではいかにもバランスがとれません。ここはひとつオットにもセンスを磨いてもらって、セレブでファッショナブルでワンダフルなカップルになってやろうじゃないのということで、二人して近くのショッピングモールに出かけました。


ほんとは「秋用のカジュアルっぽいジャケットを買おう。そしてユニクロシャツとあわせて着回そう」というつもりだったのですが、ジャケットを買えばそれに合うシャツが欲しいよね、シャツを買えばそれに合うスラックスが欲しいよね、スラックスを買えばこれに合うベルトはどうかしら? ベルトを買えばこれと同じ色調の靴を合わせるといいんじゃない〜? 靴を買えばやっぱりバックもあわせてみたいよね〜と、なんだかとてつもない大仕事になってしまい、すっかり散財してしまいましたが、でもすごい充実感でした。楽しかった!


友人は「ダンナの洋服の買い物なんて退屈の極地、つまんないよ〜」と言うのですが、私はオットの買い物につきあうのが嫌いではありません。今回の買い物でも「うーん、ちょっと冒険心が足りないんじゃない?もっと思い切って明るい色にしようよ」とか「柄物のシャツも一枚くらいあってもいいよね」とか「こっちの素材の方が高級感があっていいよ」とか「うんうん、そのジャケットはすごくよく似合う。ちょっと高いけどこっちにした方がいいよ、絶対」などなど、ドン小西ばりの的確なアドバイスをバシバシとばしました。


だってだって、「オットの服を見立てるツマ」って、なんかすごーくかいがいしい感じがするし、なんというか、ちょっとした征服感があるんですよね。
ちょっと前に、味の素かなんかのTVCMで、キッチンで料理を作っている女性が「みんなは私のご飯で大きくなる」とつぶやくのがありましたが、あの感じに近いかも。ふふふ、君のファッションはすべて私がコントロールしてるのさ。それに、「サエナイ君」だったオットが、新しいシャツやジャケットでちょこっとずつおしゃれになっていくのを見るのは悪い気はしないものですよね。


......と、私はオットのファッションや持ち物にいろいろと気を遣ってやっているのというのに、オットは私がどこでどんな服を買ってどんな格好をしようが、赤を着ようがピンクを着ようが一切興味なさそうなのがなんとも腹立つんですよねえ。たまには私の買い物にもつきあって「このジャケットにはこのカットソーを合わせてみたら?」「とこりにはこの色が似合うよ」とか、「こういうフェミニンなブラウスを着ると松嶋菜々子みたいだよ」とか「このワンピースだと宮崎あおいみたいになるよ」などという、気の利いた意見のひとつも言ってほしいもんです。


私は、毎回オットとお出かけするたびに、
「どう? この格好? かわいい?」と聞くのですが、そのたびに「うんうんうん」と全身全霊どうでもいい感じの返事しか返ってこないし、「どこがどういう風にかわいいのかきちんと言ってよ!」とちょいキレすると、「うんうん、かわいい。瀬川瑛子みたい」と、とんちんかんなことをいったりするのです。


私はオットのファッションにこれだけ粉骨砕身してるんだからもうちょっと私のファッションにも関心持ってくれてもいいんじゃないの〜? お互い切磋琢磨してセンスを向上させないと、いつまで経ってもおしゃれカップルにはなれないわよ。


私がどこでどんな買い物をしようがなにを着ていようが一切文句は言わないし、自由にさせてもらっているのはありがたいし、あんまり「あれ着るな、これ着ろ、その髪型はやめろ」とか干渉してくるのもめんどくさいのかもしれないけどさ。でもさ、一生に一度くらいは、男に干渉されて「ああもう、私の好きにさせてよ!」というセリフ、言ってみたいもんです