砂嵐よ、再び

永六輔がどこかで「最近のテレビは『食べているか、笑っているか』ばっかりだ」と言ったそうだけど、これ、ほんとーにそう思います。それに付け加えると『食べているか、笑っているか、人が死んでいるか』かな。


朝の情報番組から昼のワイドショー、夕方のニュース、夕食時のバラエティ番組、とにかくありとあらゆる時間帯で、どっかの街で評判になっている美味しいものをレポーターが食べ歩いていて、そうでなければ、お笑い芸人やタレントがひな壇に集って、自身のプライバシーを切り売りした雑談で、笑いをとっています(ご丁寧にも視聴者の皆様に配慮して、一言一句ごとに字幕スーパーが出る)。ニュース番組になると、誰かが誰かを殺したとか自殺したとかゴミ屋敷とか街の迷惑行為とか北朝鮮とか、刺激的だけど大して意味のない三面記事的ニュースばかり。そうかと思うとニュース番組のはずなのに「叶姉妹実妹宝石持ち逃げ疑惑」の話題を取り扱ったり、「行列のできるレストラン」のコーナーがあったりして、もうワイドショーもニュース番組も内容的には大して変わらなくなっているよなあ。24時間ワイドショーコンビニ状態。


私が小さい頃は、平日の夕方3〜6時くらいまでは時代劇の再放送とかテレビアニメの時間と相場が決まっていて、夕方のニュースなんて長くて1時間、ふつうは30分くらいだったように思う。それがいまや民放のニュース番組は2時間だもん。2時間だよ! 毎日毎日そんなに長いニュース番組って果たして本当に必要なのかな。どの局のニュース番組を見ても、その2時間という与えられた時間をもてあまし気味で、どうやって引き延ばすかに苦慮している様子。だからニュースと全く関係のないグルメ情報や芸能情報、耳目をひきやすい猟奇殺人ばかり取り上げるようになったんでしょうね。


私はグルメ番組も嫌いじゃないし、お笑いも好きだし、芸能ニュースにも興味あるし、どっかの街で起こった猟奇殺人の犯人はどんなヤツなんだろうという野次馬的好奇心も旺盛な方だけど、それでも、朝から晩まで同じような情報がひっきりなしに垂れ流されているこの状況にはさすがに辟易してきた。
ここが笑いどころ!と言わんばかりに挿入されるテロップにも、何かを食べて「おいしい〜♪」と大げさに喜ぶレポーターにも、「犯人の供述」として恣意的におどろおどろしくアテレコされた映像にも、どうでもいいニュースにどうでもいいコメントしか話さないしたり顔のコメンテーターにも、ほとほとうんざりです。


まあ、放送時間はちょっとでも長い方が広告料収入が増えるから、どんなにくだらなくても、クオリティが低くても、とにかく「隙間を埋める」ということだけに必死になってしまうのだろうけど、必死になればなるほど、視聴者はテレビから離れていくような気がする。昔は起きるとまず真っ先にテレビをつけていた、自他共に認める「テレビっこ」だった私が、ごく一部の番組をのぞいてほとんどテレビ見てないんだもんね*1



昔は夜の12時を過ぎたら放送終了のサインが流れて砂嵐になったりしてたけど、今、放送休止の時間ってどれくらいあるんだろう。何度も使い回したグルメ情報や、センセーショナルなばっかりであまり意味のないニュースを垂れ流すくらいなら、無理しないで昔の時代劇の再放送を流したり、ザザーッと砂嵐だけの画面にしておけばいいのに。昔と違って今はゲームもあるし、ネットもあるし、BSもCSもあるんだから、半日くらいテレビ放送がなくっても誰も困らないと思うんだけどな。ただなんとなくテレビつけて漫然と見ているだけの我々視聴者も、ヒステリックな音楽やわめき声や、不愉快なコメントや、気持ちがささくれ立つようなニュースからいっとき開放されて、ずいぶんと心穏やかになれるし、なによりも、与えられた時間枠を何とか埋めなければ!!って躍起になっている放送ギョーカイのヒトビトが一番ほっとするんじゃないかしら。砂嵐よ、再び。



というわけで、前回の更新から2ヶ月以上も間が空いてしまいましたが、またこれからぼちぼち更新しますのでよろしこ。

*1:「最近テレビ全然見てないわ〜」というと「マスコミを上から目線で批判している賢い視聴者」っぽくてかっこいいけど、そんな賢いワタクシが唯一毎週録画にしている番組が「ロンドンハーツ」だったりするのだから、私の視聴者としてのクオリティもさほど高い方じゃないけどね