ワタクシのタスク

向上心とか向学心とか野心とか、そーゆー、上向きな思考とは全く無縁な私。今日やることは明日やる、明日やらなければいつかやる。今がよければそれでいいさ、ああ〜こりゃこりゃ♪ というお気楽っぷりだったのですが、思いがけず開腹手術・入院ということになりました。術後のぼんやりした頭で白く四角い病室の天井を日がな一日眺めていると、さすがの極楽とんぼも少し真面目に来し方行く末を考えてしまいました。


思えば来月で38歳になります。四捨五入したら40です。いや四捨五入したら40なのはもうずっと前からなのですが、とにかく30代も大詰めです。世間では「働き盛り」と呼ばれる年代。子育てや仕事などで忙しく過ごしている方が多いと思われますが、私のこのぬるま湯っぷりはどうよ。これといった特技も趣味も教養もなく、一日一日をただただ漫然と過ごしているうちにあっという間に40前ですよ。もっとこうさー、主体性を持って生きていかなきゃいかんと思うんですよ。一度きりの人生じゃない? このままただ年取るだけだったらあまりにもスカスカな人生。病気して腹も切ったことだし、これまでの生き方変えて、もっとぽじちぶに、あぐれっちぶに生きていきたいわ。


そんなことを思ったのは、入院中に読んでいたこの本が強く影響しています。

走ることについて語るときに僕の語ること

走ることについて語るときに僕の語ること

走ることは僕にとっては有益なエクササイズであると同時に、有効なメタファーでもあった。僕は日々走りながら、あるいはレースを積み重ねながら、達成基準のバーを少しずつ高く上げ、それをクリアすることによって自分を高めていった。少なくとも高めようと志し、そのために日々努めていた。僕はもちろんたいしたランナーではない。走り手としてはきわめて平凡な――むしろ凡庸というべきだろう――レベルだ。しかしそれはまったく重要な問題ではない。今日の自分をわずかにでも乗り越えていくこと、それが何より重要なのだ。長距離走において勝つべき相手がいるとすれば、それは過去の自分自身なのだ。

いやー、ずしんと来ちゃいましたね。このストイックで、強固な意志と向上心。村上氏のいう「走ること」はそのまま「生きること」に置き換えられます。昨日までの自分を少しでも越えていくこと。乗り越えようと日々努めること。他人との勝ち負けは問題じゃないのです。勝つと思うな思えば負けよと美空ひばりも歌っているではありませんか(←ちょっと違う)。


私はランナーでもないしベストセラー作家でもありませんが、いままでのメリハリのない生活を根本から考え直す上でも、「過去の自分を乗り越えるため」になにか「日々努めて」もいいんじゃないかと思うようになったのです。


しかし、過去、どれほどの目標を立て、挫折してきたことでしょう。思い返すだけでも、ダイエット、英会話、エアロビクス、ダイエット、ダイエット、ダイエット......むなしくなるからやめますが、とにかく「やるぞ!絶対!」と意気込んで、あれこれ入門本を買ったり、道具を買いそろえたり(準備するのは楽しい)しても、せいぜい一ヶ月がいいとこ。とにかく長続きした試しがないのです。


私は考えました。なにせ入院中はヒマなので考える時間はいくらでもあるのです。
いままでいろんなことにチャレンジし、ミジメに挫折したのはなぜなのか。基本的に「嫌いなこと」をやろうとしていたからです。私が今やらなければならないことは、こののんべんだらりんとした生活にメリハリをつけること。小さなことでもいいからなにかタスクを設け、日々確実にこなしていくこと。そうやって、ただ流されるだけの生活から少しずつ脱却していこうと。


そうかといって、「毎朝5時起きで10キロのランニング。食事は野菜のみ。TOEIC800点を目指す!」みたいな無茶なタスクを課したところでどうせ長続きしないから、とりあえず退院後の療養生活の間でできること、それも「いやいや」ではなく楽しんでできるようなタスクを設定することにしました。


以下、入院中に書き留めたメモです。

  • 6時起床・12時就寝
  • お肉は週に2回。甘いものは1日1個。
  • 2日に一冊の読書(1週間に3冊)
  • 2日に一本の映画(1週間に3本)
  • 1日1回のブログ更新(1週間に5回)
  • 1週間に2回はパンを焼く。うち1回は新作のパンを焼く
  • 1週間に1度、窓のガラスを拭く


どれもこれも普通のことで、わざわざ「タスク」と呼ぶのもおこがましい。本を読んだり映画観たりパン焼いたりって、今までの生活とほとんど変わってないじゃんかとも思います。毎日毎日仕事や育児でくたくたになって自分の時間が全然とれないような人から見たら、あらまあお気楽でいいわねえ、というところでしょうが、でもそんなの関係ねー! こうやって意識して目標を設定し、ちょっとずつクリアーしていくことで、ほんのぽっちりでも達成感らしきものが得られれば、次のステージに進みやすいと思うのです。好きなことなら続けられるでしょ。本を読むのも映画を観るのも、パンを焼いたりガラスを磨いたりするのも「努力」じゃないかもしれないけど、日々のメリハリをつけるためには有効かも。なにより楽しいし。かといって、あんまりきっちりかっちり数値設定するとあとが苦しいので、2日に一冊の読書だったら週に3冊と、少しだけ余裕を持たせてみました。 


というわけで、今日はちゃんと6時に起き、新作のパン(クルミ入り米粉パン)を焼き、本を一冊読み(金井美恵子「待つこと忘れること?」)、こうやってブログの更新をしているところです。明日雨がやんだら窓ガラスを拭かなきゃ。


待つこと、忘れること?

待つこと、忘れること?