基本はハタキ

イチジクのクリームチーズのせをむさぼり食いながらワインばかり飲んでいる私ですが、これでもれっきとした病み上がりですので、家事の30%くらいはオットに分担してもらっています。今朝は私が朝食後の皿洗いをしている間にオットに部屋の掃除をお願いしました。

「まず部屋中の窓を全部開けて、動かせる家具は全部動かして、全体に掃除機をかけたら、その後ぞうきんで舞い散った埃を拭き取ってね」
と指図したら、オットは
「いや、僕はアレを使うよ。とこりがいないときは、いつもコレを使ってるんだ」としばらく物置をごそごそやって、ふるーーーいハタキを取り出してきました。
「とこりってさー、マメに掃除してる割には基本ができてないんだよね。掃除っていったらまずハタキでしょう。どうしてこんなにすばらしい道具を活用しないの?」と言います。


私の掃除は掃除機が基本。手の届く範囲はくまなく掃除機をかけて、掃除機が届かない場所(タンスの上や障子の桟、本棚など)の埃は細かくぞうきんで拭き取る――という手順です。しかし、オットに言わせると、掃除の最初はなにはなくともハタキ!なんだそうです。


最初にハタキがけをして、たまった埃を全部はらいおとして、埃が下の方に落ちきってから、おもむろに掃除機をかけ、終わったらしっかり換気すれば、埃は全部下に落ちて吸い取られるので、あとは軽く拭き取るだけでいいんだそうです。12年前に亡くなったオットのお母さん(戦前生まれ)はいつもそうしていたのだとか。


なるほどね〜、確かにその方が合理的だわ。いままで気づかなかった天井の隅っこや観葉植物の葉っぱもハタキでぱたぱたやったので、隅々まできれいになった感があります。


昔、「言うこと聞かないとこれだよ!」と言いながらハタキを持って追いかけくるおっかない親戚のおばちゃんがいましたが(もちろん、ハタキの柄でバンバン叩くのだ)、最近あまり聞きませんよね、ハタキ。昔の家は間取りが和室中心で収納スペースがあまりなかったので、家具やモノはすべて部屋の中においてあったため、掃除機やモップで掃除をするよりハタキやほうきを使った方が小回りが利いて効率がよかったのでしょう。けど、今はどうかな? 畳の部屋はあまりなくなったしフローリングやカーペットなら掃除機をかけた方がいい。収納スペースが充実しているので、部屋の中にあまりものを置かなくなったので細々したところのゴミは化学ぞうきんでさっと一拭き、で事足りちゃうんですよね、きっと。だって、奥様向け雑誌の「おそうじ特集」とか読んでも「ハタキがけ」のことなんか書いていないもの。ハタキってもはや昭和の遺物なんでしょうか? 


でも、オットに言われて改めて気づいたハタキのよさ。フレキシブルだし、手軽だし、なによりエコだ。捨てたモンじゃないぞ、ハタキ。この次掃除をするときは、掃除機の前にまずハタキがけをしよ!


ハタキがけで思い出すのは幸田文の「あとみよそわか」という一文ですね。文豪幸田露伴に徹底的に仕込まれた掃除の手順についての格調高い随筆です。お掃除が好きな方はぜひご一読を。ううむ、家事って深い。


みなさんの家のお掃除はどんな手順ですか? ハタキ、使ってます?



「あとみよそわか」が収録されています。

父・こんなこと (新潮文庫)

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