修行ランチ

私の快気祝いもかねて、どこかすてきなレストランでちょっとセレブなランチをしましょうよ、というお誘いをうけて、某高級シティホテルの某フレンチレストランでランチをいただいてきました。
正真正銘のセレブランチですのよ。だって、あのミシュランで星がついたらしいんですもの。ミシュランとか星つきレストランとか別世界の出来事だとばかり思っていたのですが、平日の昼間っからワタクシごときのプータロー主婦がランチに来てしまうとは。


場所は汐留のオサレシティホテル。もうエレベーターからオサレ。受付嬢はそのままJJのモデルになれそうなくらいオサレ&美人。25階にあるレストランからは東京湾岸のパノラマが一望できます。居並ぶ客もオサレでエレガンスで、とにかくもうなにからなにまで高級そう。雰囲気もゴージャス、テーブルセッティングもゴージャス、お料理なんか、一日経った今思い出してもうっとりするくらいゴージャス&デリシャスで、夢のようなひとときだったのです。


でも、夢のようなひとときであっても、私の心は曇りがち。なぜなら胸の片隅ににいつも
「私ばっかりこんなに幸せでいいのかしら? オットに悪いわ。オット、ごめんなさい」という罪悪感があって、心の底から楽しめないのです。


美味しい食前酒にほろーんとしながらも
「ひとりでこんなに美味しいカクテルを飲んだりしちゃって、オットごめんなさい」
肉汁したたる鴨のローストにとろけそうになりながらも、
「ああ、うちのオットなんて、鶏肉と豚肉の区別もつかないのに、私だけ鴨肉なんて特殊な肉を食べたりして、オットに悪いわ。オットごめんなさい」
華やかに盛りつけられたデザートを前にしても
「うちのオットのおやつは湖池屋スコーンだったのに、私だけこんなに手の込んだデザート食べちゃって......。オットに悪いわ。オットごめんなさい」
食事の間中、ひとくちごとに
「オットごめん、オットごめん」と唱えながら咀嚼していました。


ほんとうに私って貧乏性なんですね。オットと一緒じゃなければ、すてきな景色も美味しい料理もあまーいデザートも、100%楽しめないんです。オットなしのレストランなんて、オットなしのお出かけなんて、オットなしの人生なんて、私にとっては砂をかむように味気ないもの。オットあっての私なのです。ああ、美味しいけど一人じゃ悪いわ。ああ、楽しいけど、一人じゃ悪いわ......


でも、長い人生にはオットがいない時でも一人で切り抜けなければならない局面がいくつか出てくるでしょう。ひとりだからといって「オットと一緒じゃないと悪いから」と食欲もなくなるようだったら、そんなの、自立した人間とは言えません。いつまでもオットに依存していてはダメ。すてきな景色も美味しいお料理も、一人の人間としてとして楽しめるように訓練しなければ。


そんなわけで、一人の自立した人間になるために、心を鬼にして「オットに悪いと思っちゃダメ!」と言い聞かせながらランチをすませた私だったのです。
苦しいけれどこれも修行です。オットのことを完全に忘れて心の底から幸せを感じられるようになるまでまだしばらく修行を続けなければなりません。オットなしのランチ、オット抜きの海外旅行、オット抜きの温泉、待ち受けている試練の数々......私に乗り越えられるでしょうか? 自立したオンナへの道は遠く険しい。頑張らなければ!


この次のランチは一分たりともオットのことを思い出さないように自分をしっかり持ちたいと思います。ああ、早く自立したオンナになりたいわ〜〜