ありきたりの夜に

日曜日。
バイト先のお昼休みにケータイでmixiをチェックしたら、「秋葉原で通り魔。死傷者多数」のニュース。


その日、オットは朝から新宿で仕事で、「今日の仕事は午前中だけだから、帰りにアキバに寄って本とかCDとか見てくるよ」と言っていたのを思い出しました。事件が起きたのは12時半頃。新宿で12時に仕事が終わったとして、秋葉原到着はちょうどその頃? まさか巻き込まれていないでしょうね!?


一瞬にして血の気が引きました。震える指でオットのケータイにコールします。出ない。何度かけても出ない。真っ青になった私を見て、バイト先の店主さんが「大丈夫だよ。日曜日の秋葉原なんて何万人という人がいるんだから」と慰めてくれましたが、「絶対に大丈夫」という確証はどこにもないのです。なにせ、無差別殺人なんだから。


オットがコールバックしてきたのは30分後。電車の中だったので気づかなかったのだそうです。「心配してるだろうと思ったよ」と、いつものオットの声を聞いたときには、ホッとして涙が出そうになりました。


あの日あの時刻、秋葉原を歩いていた人の誰一人として自分が通り魔に刺されるなんて思っていなかったはず。被害者の家族達も、いつものように朝を迎え、いつものように朝食を食べ、いつものように出かける家族を送り出して、まさかそれが永遠の別れになるとは思っていなかったはず。悲劇と日常を分ける境なんて、ほんとうにもろいものなんですね。


夜は二人で近所のレストランで食事をしました。特別なことはなにも話さなかったけど、ごくありきたりの会話を二人で交わせる幸せをつくづく感じた夜でした。来年のこの日も、同じようにありきたりの夜が過ごせますように。
そして、あの日、ありきたりの幸福を無惨に断ち切られてしまった7人の命に心からの追悼を捧げます。