社会人のたしなみ

オットと二人で入った居酒屋。店内のテレビがついていて、まさに女子柔道の決勝戦が始まったところでした。
かなり混み合っていた店内でしたが、日本の選手が一本勝ちを決めたとたん、お客さん全員が「おお〜っ!!」と大歓声。
試合を決めて5分後くらいに店に入ってきた男性客が私たちの隣の席に座って、
「谷本、決めたんですか? 一本勝ち?」とコーフン気味に話しかけてきました。
「ええ、なんか金メダル? みたいですよ」と言うと、

「すごいな彼女、これで連覇ですね! ニッポン、勢いついてきましたよねえ!」
と、大喜び。「金メダルの喜び」を私たちとともに分かち合いたい!という雰囲気マンマンだったのですが、われわれフーフと言えば、この選手の名前も、この試合が決勝戦で、勝てば金メダルだということも、もし金メダルを取れば2大会連覇になるのだということもまったく知らなかったので、「す、すごいですねよえ。えへへ」と愛想笑いするのみ。
彼は続けて
「他の競技はどうなりました? 誰かメダルとりました?」
と訊いてくるのですが、ごめんなさい、全然知らないんですよ。だいたい、さっき谷本選手(このときはじめて名前を知った)がメダルを取った瞬間も、オットの「森林インストラクター試験」対策の口頭試問の予行演習をしていたくらいだもの。


テレビで何度も繰り返される「メダルの瞬間」に、店内の客はすっかり大盛り上がり。いまにも「ニッポン! ニッポン!」と手拍子が始まりそうな勢い。私たちはすっかり気圧されてしまいました。

私たちフーフは趣味も性格もまったく違いますが、「スポーツ観戦に興味がない」という点だけは共通していて、二人で「オリンピック中継を見る」なんてことがほとんどないのですが、あまりに無関心というのもちょっと場違いだし、「社会人のたしなみ」としてちっとはオリンピックのニュースも見なくちゃ世間から取り残されるなあ......と思って、そのあと10分くらいテレビを見ていました。が、草野仁の隣に座って、まっ......たく、なんの仕事もせずに、ただおすましして座っているだけいる荒川静香(ずいぶん気の強そうなお姉さんだなあと思っていて、荒川静香だと気づくまでしばらくかかった)が、なぜか一番印象に残ったのでした。あれなら「荒川静香フィギュア」をおいておくだけでもいいな。


でも、ニッポン選手がメダルを取ったのはうれしいです。谷本選手、おめでとうございます。お疲れさま。