ひとがみな、我より速く見える日よ――

「つづく」と書いて10日以上も経ってしまった......もはや誰も読んでいないと思いますが、このまま尻切れトンボになってもアレなので、とにかく完走、じゃなかった、完成させよう。


「とにかく完走!」だけを目標にした「あやはし海中ロードレース」出場のため、いよいよ決戦の地・沖縄へ。ホントならレース当日までは調整に調整を重ね、体力・気力とも万全のコンディションで臨みたいところですが、なぜか今回の帰省はこれまでにないハードスケジュール。


1日目 那覇着 実家泊
2日目 石垣島へ。沖縄最高峰のオモトダケ登山 石垣島
3日目 石垣島から高速艇で西表島へ。マングローブの森の中をカヌーで下る。西表島
4日目 西表島石垣島那覇へ 実家泊
5日目 実家にて興南高校の応援 実家泊
6日目 あやはし海中ロードレース
7日目 フェリーで幼なじみが住む伊平屋島へ 伊平屋泊
8日目 伊平屋島から那覇
9日目 那覇から羽田へ


8泊9日の滞在中に3つの島を渡り歩き、山に登ったりカヌー漕いだり、といういつになくアクティブなスケジュール。要所要所で母の手料理や親戚・友人たちとの酒宴のおかげで食べ過ぎは必至。楽しいんだけど、今の私は大事なレースを控えた身……。ケガなんかしたらどうしよう。それより、こんなハードスケジュールじゃ調整どころじゃない、ジョギングする暇あるのかしら?


石垣島や西表に渡るときも、ランニングシューズやウェアは持っていって、時間を見つけて走ろうと思ってはいたのですが、とてもそんな余裕はなく。かろうじて石垣島で早起きしてホテル周辺を軽くジョギングしましたのですが、run&walkでデータをみてみると、ペースが格段に落ちていて愕然。しかも、ほんの4kmほど走っただけなのに、足はガクガク心臓はバクバク。スタミナも落ちています。やばいよ、これはやばいよ。

結局、沖縄に渡ってからはろくな練習もできずにいよいよレース前日。とりあえず2日ほど禁酒して、夜寝る前のスクワットと腹筋だけはしておきましたが、そんなの気休めにしかなりません。頭の中は石垣島をちょこっとジョギングしたときの格段に落ちたペースのことばかり。しかも、お肉&油たっぷりの沖縄料理をたらふく食べたおかげで、体重が2kgも増えていました。ランニングの時は、1kg体重が増えるとペースが2分遅くなるときいたことがあります。しかも、大会当日の天気予報は雨。いままで雨の中を走ったことはない。ずぶぬれで走ってどんどん体温が奪われて心筋梗塞と低体温症で死ぬかも?......あああっっっっっ、もうだめだ。完走、無理無理〜〜。知り合いという知り合いに「今度10km走るからね!」と吹聴しまくってきただけに、いまさら「制限時間オーバーでした。えへへ」なんて恥ずかしくてとても言えない。やっぱり最初から10kmなんて高望みしないでおとなしく3.8kmにしておけばいらない恥かかなくてすんだのに……。不安と後悔でどよーーーんと沈んでしまいました。


が、ちょうどその日、春の選抜で地元沖縄の興南高校沖縄県勢としては○年ぶりに決勝戦に進出。息詰まる熱戦の中、延長10回で日大を下し見事優勝したのです。父や母とテレビの前で応援しながら、どんなピンチが訪れてもうろたえず平常心でベストなプレーを続ける彼らの姿に胸がジーン。優勝旗を抱えて晴れ晴れとした顔で甲子園球場に立つ球児たちを見て、「彼らのプレッシャーにくらべたら私の不安なんてちっちぇえちっちぇえ。気持ちが先に負けてちゃアカン!とにかく楽しく、精一杯走ればいいんだ! 


そう考えて気持ちをリセットしたものの、大会前夜は緊張のためほとんど眠れません。天気予報は相変わらず雨。窓の外の夜空はどんより曇って今にも降り出しそう。一緒に帰省したオットは、私の初レースを応援することもなく、大会二日前に仕事のためさっさと帰京。当日は父が会場まで送ってくれる予定ですが、その父も用事があるとかで私をおろした後すぐ家に帰ってしまうそうです。せっかく地元でレースに出るっていうのに誰も応援に来てくれないという、なんとも寂しい事態に。


そして迎えた大会当日の朝。眠れないまま4時頃起床。カーテンを開けて外を見ると、予報通りしとしと雨が降っていました。スタートまでに止むといいなあ......と思いながら、ウェアに着替えて勝負タイツをはきます。いつもなら、「こんなにたくさん食べられないってば!!」とキレてしまいそうになるくらい大量に料理を作ってくれる母ですが、なぜかこの日は寝床に入ったまま。キッチンを漁っても料理らしい料理はない。仕方ないので持ってきていたSOYJOYをかじります。それにしても母ちゃん......いつもは「いらない!」って言っても必殺カメーカメー攻撃してくるくせに、なんで肝心なときに作ってくれないかなあ。謎だ。


いっそう強くなり始めた雨の中、父の車で会場に向かいます。ナンバーカードの受け取りのため、2時間前くらいには会場に到着してください」とのことでしたが、せっかちな父のおかげで、到着したのはなんと6時50分! スタートまで3時間もあります。すっごく待ち遠しいひとみたいじゃないか。
ナンバーを受け取って、総合受付でひたすらスタートを待ちます。といっても、おしゃべりする相手も居ず、本も雑誌もない。軽くジョギングでもしてウォームアップしようにも、そとはざあざあ降りでびしょぬれ必至です。チームで参加する人々は独自に簡易テントを設営してその中で着替えたり談笑したりしています。レース慣れしてるんだなあ。楽しそう。終わった後はみんなで打ち上げか。いいなあ......しかし、私はひとりぼっち。総合受付のトイレの前でひたすらひたすら待ち続けました。


屋台で地元の少年野球チームの父兄が作ったおにぎり(一個50円ででかくておいしかった!)を食べてパワーチャージ。友人にメールしたり、twitterでつぶやいたりしているうちに、出場者がぞくぞくと集まってきます。みんな超速そう。スタイルもいいし、ウェアもバッチシ。特に土地柄かアメリカ軍関係者とおぼしき外国人の姿が目立ち、この人たちはもう圧倒的に手足が長くて筋肉質でオリンピック選手みたいです。こんな人たちと一緒に走るの?私? なんか完全に浮いてるよね......。とにかく、目に入るひとすべてが自分よりはるかにアスリートっぽくってヨユーな感じ。私はと言えば、前日からの睡眠不足もあって、タダでさえ重い体がいっそう重く感じられます。スタート時刻が近づくごとに高まる不安。ますまする雨......。どうしよう、ほんとに完走できないかもしれない。ダイジョブか?私?

ひとがみな、我より速く見える日よ おにぎり買いきて ひとりもぐもぐ

そしていよいよスタート時刻15分前。アミノ酸を飲んで、塩飴をなめて、泥でびちゃびちゃになった陸上競技場のスタートラインまで歩きます。さあ、いまさら心配してもしょうがない。チバリヨー自分!


しつこくつづく。てか、もう次は終わらせたい......