甘〜〜く濃厚な夜

全部おいしくいただきました

バイトの給料日なので、お気に入りの近所のレストランで食事しよう! ということになり、ちょっとばかしおしゃれをして出かけた。
7月に開店したばかりのこの店、開店当初はあんまりお客さんが入っていなくて、「ダイジョブかしらね?」などと心配していたのだが、最近は口コミで評判が広まり、ランチタイムなどはなかなかの盛況らしい。


で、おなかを空かせていそいそと出かけた私たち。前菜が運ばれてくる前にとりあえずちょこっと乾杯しましょうかね、とキールを2杯頼んだ。
ほどなくして、背の高いグラスに小刻みに波打つ赤い液体が運ばれてきた。


清潔な店内、低く静かに流れるカンツォーネ、オレンジ色の照明に照らされる魅惑的な赤い液体、んもう、なにもかもがオハイソでオサレでアモーレ! ブラーボ! ちょいワルオヤジ! の、LEONの世界である。美しく聡明なニキータ(私のコトね)を前にしてオットも満足げだ。


「じゃあ、とりあえず、乾杯しますか」
「かんぱ〜い♪」


とグラスを鳴らして、一口飲み込んだとたん、私たちは二人同時にむせかえった。


「......甘い。甘いなんてモンじゃない、激甘」
「なんかトロッとしてるし......」
キールって、こんなに甘かったっけ?」
「いや、イタリアではこれが本式なのかも......?」
「しかし、いくらなんでも......」


二人でひそひそ協議の結果、ウェイトレスを呼んで訊いてみることに。


「あの〜、このキールむちゃくちゃ甘いんですけど、こういうモンなんですか?」


ウェイトレスはハッ!とした顔つきで厨房にとって返し、真っ青な顔で戻ってきた。


「すみません! カシスリキュールを白ワインで割るべき所を、間違ってガムシロップで割ってしまいました〜! 急いで作り直してきます!!」


なるほど、さっき飲んだのはカシスリキュールのガムシロ割りだったのか。甘いはずだわ......。


てゆうか、キールってカシスリキュールを白ワインで割って作るのね。初めて知ったわ。「この甘さが本場の味なのよ!」なんてやせ我慢して全部飲み干さなくてよかった。


あ、でも最初のキールがちょっとアレだっただけで、あとは全部おいしかったです。作り直して持ってきてくれたキールも。ごちそうさま。