シンプルな答え

バイト先でのこと。
ランチのBコースには、4種類の前菜の盛り合わせがつく。その中の1種類、サツマイモとレーズンのサラダを食べた品のいい初老の婦人が、
「ちょっと、ちょっと」
と私を呼ぶ。
「なんでしょう?」
「あのね、今食べた、このサツマイモのサラダ、すっごくおいしいの! なんていうのかしら、いままでに食べたことのない味よ。複雑な甘みがあってほんのり酸っぱくて。おいしいわ〜。ね、このドレッシングは何を使っているの?」
「おほめいただきありがとうございます。ただいま調理長に確認してまいります。少々お待ちください」
と慇懃に答え、厨房に戻り、シェフに質問する私。
「すみません、前菜のサツマイモのサラダに使っているドレッシングは何を使ったものですか?」
するとシェフは
「あ、それ? ドレッシングっていうか、マヨネーズで和えただけだけど」
とこともなげに言う。


マヨネーズ......。
あんなに感激しているお客さんに伝えるにはちょっとシンプルすぎる答えでした。


まあ、ただマヨネーズで和えただけのサラダでも、シェフの腕次第で感動を与える立派な一品にもなりうるってことで。