ブーケトスのおもひで

「職業婦人通信」1/19
ブーケをめぐるアレグリア

私も、純情可憐なうら若き花嫁になったときに、ブーケトスというパフォーマンスをしたことがある。


私たちの結婚式は食会費制の立食パーティーだった。新郎新婦が自らマイクを握って司会をし、ビンゴゲームを仕切り、誓いのキスも指輪交換もなく、引き出物はちんすこうと新婦お手製のクッキーという、ものすごくシンプル&ハンドメイドな式だったのだが、ありとあらゆる儀式を省略・簡略しても、オンナの花道、ブーケトスは絶対に欠かせない!と、私はえらく張り切っていた。


美しく華やかに着飾り、階段の上から、「さあ、私の幸せをお裾分けよ〜おーほほほほほっ!」と高々とブーケを放り、我先にブーケを奪い合うシモジモの人間を優越感に満ちた目で見下ろす......絶対的に女王様になれる一瞬である。気持ちいいだろうねえ、サイコーだろうねえ。一生に一度くらいはそんなタカピーな真似をしてみたい、してみせるわっ!フンッ!(鼻息)。私にとってブーケトスはそのような意味合いだったのだ。


さて、いよいよ、結婚式のクライマックス、ブーケトスの時がやってきた。にぎやかな宴が終わり、参加者はがやがやと会場レストランの出口(渋谷公園通り)まで出る。私は階段の3段ほど高いところから、さあ、ブーケトスよ、私の幸せをお裾分け! とブーケを高々と放り投げた――


高々と放り投げすぎたのだ。ブーケは出口ホールの天井にぶち当たり、グシャっと音を立てて床で砕け散った。


しーーーーん......
ドン引きになる一同。床には粉々になった新婦の幸福の象徴であるブーケ。
「うわ〜、むちゃくちゃ幸先悪いなあ。あっははははあ!」
と自らつっこんでギャグにしても、みんなあまり笑ってくれない。


一瞬の隙をついて、OL時代の後輩のノリコちゃんが「あ、誰もいらない? じゃあ私がもらっちゃおうっと。ラッキー♪」と床のブーケの残骸を拾い集めて手提げ紙袋に入れてくれた。そして誰かが「大丈夫かあ? そんなの拾って? かえって縁遠くなるんじゃないか?」とまぜっかえして、そこでようやく笑い声がおこった。ノリコちゃん、ありがとう、気を遣ってくれて......


今となっては笑い話だけど、あのときはかなり恥ずかしかった。ヨコシマな気持ちでブーケを投げたアサハカな花嫁に、神様が罰をお与えになったのですね。謙虚に生きましょう、みなさん。


あれから8年。ブーケは床で砕け散ったけど、私とオットは未だに夫婦で、そこそこ仲良くやっております。そして、ブーケの残骸を拾い集めてくれたノリコちゃんは、その2年後に結婚し、今は幸せな2児の母です。幸せは歩いてこない、だから歩いていくんだよ。砕け散ったブーケでも、それなりに御利益はあったみたいよ。


というわけで、「ブーケをめぐるアレグリア」、続きを楽しみにしております、千代子さん。