でも食べたい

昨日バイト先で接客した変わったお客さん。20代後半〜30代前半のサラリーマン風の男性。職場の後輩らしきかわいい女の子を連れてランチメニューを眺めていた。


客「この『魚介入りトマトソーススパゲティ』っていうのは、貝は入っているの?」
私「はい、ムール貝とアサリが入っております。お嫌いでしたら、貝類抜きで作ることも可能ですが?」
客「いや、ムールもアサリも好きなんだけどね。これ、殻ついてるよね?」
私「はい、ムール貝もアサリも殻つきでございます」
客「ボク、殻は欲しくないんだよ」
私「は? あ、お料理お出しするときにはちゃんと殻入れ専用の小鉢をお持ちしておりますので」
客「いや、そういうことじゃなくてさ、自分で殻取らなきゃいけないんでしょ?」
私「え、ええ、そうですね」
客「それがヤなんだよ。手、汚れるしさ、めんどくさいでしょ?」
私「では、貝以外の具を使って作るように申しつけましょうか?」
客「いや、貝は食べたいの。あのさ、厨房に行って、具の貝類、むき身で入れてくれるように頼んでくれる?」


結局、この客が注文したスパゲティには、シェフが一個一個手で殻を取ってむき身にした貝を入れてやったのだった。ランチタイムのクソ忙しい時間、はっきり言って迷惑だった。まあ、でもお客様は神様だから。


リンゴは好きだけど、皮をむくのがめんどくさいから食べない。蟹は好きだけど、食べるのがめんどくさいから食べない――そういう人はよくいる。でも、めんどくさいことは人任せで、オイシイとこだけは食べたい、っつーのはどうなんでしょ? 2歳3歳のお子ちゃまならまだしも、いい年したオトナが、たかが貝の殻を取り外すことくらい、そんなに難しいことでもないはず。おしぼりだって殻入れだってちゃんと用意しているんだから。しかも彼は女の子連れ。ふつー、女の子連れてるときは、ちょっとでもスマートに振る舞いたいと思うんじゃないのかしら。珍しい人もいるもんだ。