心豊かな乗務員
沖縄で乗ったタクシーの中にあった乗務員募集のチラシです。
定年を迎えたお父さん
新たな人生を活かしてみませんか?事業拡大の為70名大募集タクシー乗務員◆1勤1休でもかまいません!! あなたの体調に合わせて働いてみませんか?
◆自分の小遣いは自分で稼いでみませんか?
◆女性ドライバー特に大歓迎
「自分の小遣いは自分で稼いでみませんか?」というフレーズが思わずツボでした。浮かんでくるのはこんな情景。
定年退職し、いきなり手にした自由な時間を持てあましている父ちゃん。これといった趣味もなく、何かを始めようという覇気もなく、日がな一日ぼーっとテレビを見たり、鼻毛を抜きながら新聞読んだり。家事を手伝うわけでもなく、庭仕事するわけでもなく、ただただ、所在なさげにぶらぶらしているだけ。
母ちゃんはそんな父ちゃんが鬱陶しくてならない。せかせかと掃除機をかけつつ、寝転がってテレビを見ている父ちゃんを横目に、
「ほらほら、そこ、ジャマ! も〜〜う、父ちゃんよ! まだまだ十分働けるでしょう! 家でとぅるばって*1いるんだったらアルバイトでもしてタバコ代くらいは自分で稼いだら??」
なんて憎まれ口を叩く。かわいそうに、家の中で小さくなっている父ちゃんである。
ああ、俺の人生、いったいなんだったんだろう。いままであくせく働いてきて、やっと勤め上げても、家族には邪魔者扱い、「小遣いくらい自分で稼げ」とか言われるし。てゆうか、俺の退職金どうしたんだよ......? あ、まだ住宅ローンが残っているのか。長女の結婚披露宴にもだいぶ金かかったからなあ......( ´・ω・`) ショボーン
そんなある日、たまたま乗ったタクシーで目にするこのチラシのこのフレーズ。寂しい父ちゃんのハートにすっぽりハマるに違いありません。
さらにこのチラシの最後の部分にはこんなフレーズも。
採用決定時には米1㎏券を10枚差し上げます。
心豊かな乗務員をお待ちしています。
さあ、再就職に向けてがぜん張り切る父ちゃんである。チラシを抜き取りポケットに忍ばせ、就職活動開始。見事採用が決まって、米10㎏を土産に持って行けば、母ちゃんだってご機嫌だ!
ちばりよー父ちゃん! セカンドライフはタクシーに乗ってやってくる〜♪
*1:沖縄方言。「ぼんやりする」の意