動揺の回転寿司

そういや長い間お刺身食べてないなあ、お刺身恋しいなあ......ということで、お昼はオットと二人で近所の回転寿司。


朝食が軽めだったのに加えて本日のバイトはかなりハードだったので、空腹MAX。店に入る前から、「まず最初はハマチで、ビントロ、赤貝、エンガワ、それからトロサーモン!」と頼む順番まで決めていた。喰う気マンマン。


オットと二人でかわりばんこに注文し、間に岩のりのおみそ汁、茶碗蒸しなどもはさんで黙々と食べ続けること15分。えーっと、あとはホタテとネギトロ巻きと、穴子も食べちゃおうかなあ......と思っていたのに、オットは「さ、そろそろ出ようか」と言う。え?もう?――と思ったけど、そういや、ここんとこ体重がずーっと増量気味だし、あともうちょっと食べたいなあ、と思うくらいのところで止めておくのが大事なのよね。本能の赴くまま食べ過ぎてちゃだめだわよ。腹八分目、腹八分目。理性でブレーキかけてるオットはえらいなあ。二人で食べたお寿司は10皿。お昼だしね、こんなもんか。


店を出て本屋とスーパーを回って家路につく頃、オットが
「あ〜、腹減ったなあ。やっぱあれだけじゃ足りないや」と言う。
「え? そうだったの? 私、あと2,3皿食べたいなあと思ってたけど、あなたが止めるから我慢したのに!」
「いや、ボクだってもっと腹一杯になるまで食べたいよ。でもさ、回転寿司ってどうも苦手なんだよなあ。食べてるそばから空のお皿がどんどん積み重なっていくと、一枚積み上げられるたびに頭の中で『今のお皿は○○円、合計金額○○円、あ、このお皿で○○円......』って計算しちゃうんだよな。食べた分がそのままビジュアルに反映されると耳の奥でチャリーンって小銭の音がするんだよ。別にたいした金額じゃなのはわかっているんだけど、『ほーらほら、もうこんなに食ったぞ、どんどん食え、どんどん食え』って脅迫されているような気がして落ち着かないんだよなあ。食べ終わった皿は、目に触れないところで重ねてくれないかなあ。そうすれば店だって儲かるだろうに」
と言う。


......君のそのキャパシティに泣けてくるぜ。


うちのオットは、ドイツデザインの家具や小物が好きだったり、モダンジャズを聴いたり、サックスを吹いたり、コーヒーは苦くて濃くて小さいエスプレッソをノンシュガーで飲んだり、雑誌「Pen」を愛読してたり、「オレって違いのわかるハイセンスなナイスガイ!」を気取っているけど、このように、回転寿司の皿の枚数であっけなく動揺してしまうちっちゃいヤツなのです。夜な夜な新橋の高級お寿司屋さんでオハイソな夕餉を取っていらっしゃるMADE IN JAPANの堀内さんの爪の垢でも煎じて飲みなさいよ......。


しかし、そういう私も、回転寿司で200円以上の皿を取ったことのない小心者。180円のお皿を2枚続けて取るのにも、実はかなり抵抗がある。やっぱり似たもの夫婦なのか。ああ、情けない。もっとスケールの大きい人間になりたい! いつの日か420円の金皿の大トロも、ズワイガニも、生ウニも、ガンガン食べてやるぜ! ビックになってやるからな! 堀内さん、見てらっしゃい!


いやでも、105円の皿でもあれはあれでうまいんですよ。エビマヨ軍艦、ツナサラダ、しょっぱい〆さば、実に結構。はは。