かおちゃんの涙

先週末、弟夫婦に第二子が誕生した。
メールに添付された写真には、真っ赤な顔の、つぶらな瞳の女の子。母子ともに健康。なまえはみおちゃん。


これで弟夫婦の最初の女の子・かおちゃんは4歳年上のお姉ちゃんになった。


弟夫婦の最初のこども、しかも実家の両親にとっては初孫だったかおちゃんは、とこり一族の愛情を一身に受け、それはそれは猫かわいがりされてきた。寝ても起きても「かわいい〜♪」、泣いても笑っても「かわいい〜♪」、保育園で覚えた歌をみんなの前で披露すれば「上手〜♪」、絵本を読めば「賢い〜♪」、電話の取り次ぎをすれば「お利口さん〜♪」......もうね、アフォかと。


しかし、新たな家族が加わることによって、今まで通り愛情の独占状態というわけにはいかなくなるのかもしれない。かおちゃん、大人達の微妙な態度の変化、自分に向けられる愛情の配分バランスを敏感に感じ取っているんじゃないかしら? 弟や妹ができると、上の子が急に「赤ちゃん返り」して、親を困らせるって話、よく聞くしね。


「かおちゃん、どうかしら? 寂しがっていない? ぐずったりしていない?」
と電話で母に聞いたら
「ちーっともそんなことないわよ。自分がお姉ちゃんになったってこと、よくわかっているのね。『ママが病院から帰ってくるまでの間、ばあばのところでお泊まりしましょうね』って言っても素直に言うこと聞くしね。あんたなんか妹が生まれてしばらくは、そりゃもうぐずってぐずって大変だったのよ。ほんとに手を焼いたわよ。あんたと違ってかおちゃんはお利口さんだわ〜賢いわ〜」


孫を褒めるのになぜ実の娘をくさすのかまったく理解不能なのだけど、かおちゃんの様子に変わりがなくてとりあえず、よかったよかった、と安心したとこりおばさんなのであった。


さて、かおちゃんに妹が誕生して、一週間。かおちゃんのママが退院する日になった。ママは、生まれたばかりのみおちゃんをしっかりだっこして、家に帰ってきた。そしてかおちゃんにこう言った。


「ママのおなかが大きかったから、かおちゃんのこと、しばらく抱っこできなかったけど、もうおなかもぺしゃんこになったから、これからまた、たくさんかおちゃんのこと抱っこしてあげるからね」


ママのその言葉を聞いたかおちゃんは、黙って涙をぽろぽろ流して、ママの膝に顔を埋めてしまったのだとか。


お姉ちゃんになったかおちゃん、気丈に振る舞っていたけど、やっぱり寂しかったのね。えらかったね。よく我慢したね。みおちゃんが来てよかったね。ママが帰ってきてよかったね。かおちゃんの寂しさをちゃんとわかってくれてるすてきなママでよかったね。