栗原はるみのアイロン

昨日の「ソロモン流」は栗原はるみ氏の特集だった。
世界料理本コンテストでグランプリを獲得して以来、ますますカリスマ主婦としてのスケールが上昇した感のある彼女。今回の放送でも、その「軽やかでおしゃれな、わたし流の家事」のセオリーをいかんなく発揮していた。ついでにはるみビジネス関連商品のPRもいかんなく発揮していた。


「家が好き」「家族が好き」「家事が好き」が彼女のキャッチフレーズで、この番組内でもしきりに「料理研究家になったのは『家族』においしい料理を食べさせてあげたいから」「いつでも『家族』が笑顔でいられる家にしたい」等々「ファミリー万歳!」的コメントの数々。


いつも家の中が居心地よく整えられていて、手作りのおいしい食事が常に用意されていて、そうかといってちっとも所帯じみてなくて、おしゃれに軽やかにいきいきと家庭運営している姿は理想だし、憧れるわよ〜。でも、家庭の中の様々なしがらみやストレスを漂白しきった「私の幸せな家庭」をアピールされすぎると、はいはいもうわかりましたから!という気分になる。そりゃあ、あんたは家の中も、家事のやり方も、家族ですら全部メシのタネなんだもん、お皿洗いのやり方ひとつとっても商売に結びつくんだったら、さぞかしポジティブになるわよねえとひねくれたことを考えてしまう私である。


しかし、はるみ氏本人のインタビューなどを見ると、服装やメイクなどもすごくナチュラルで、会話の受け答えにもちっともイヤミがない。数多いる料理研究家のなかでは間違いなく頂点に君臨する存在でありながらまったく偉そうに見えないのはすごいと思う。「はるみビジネス」の手法には、うわー、あざといなあ、ここまでやるか?? と思わないこともないけど、栗原はるみ氏本人の、あの飾り気のないたたずまいはほんとうに好もしい。このあたりが人気の秘密なのかもね。


さて、はるみ氏は多忙を極める現在も、取材や撮影は極力自宅で行い、家族の食事も撮影用の料理を使い回したりせず毎回必ず作るという、「家庭優先」ぶりであった。朝もかなり早起きで、掃除洗濯庭の手入れなどすべて朝に済ませてしまうという。なかでも驚いたのはアイロンがけ。
早起きした彼女がせっせとアイロンをかけているのは、なんとご主人のパジャマだったのだ。


パジャマですよ? パジャマ! 


番組ディレクターが驚いて「パジャマもアイロンかけるんですか?」と訊くと、
「パジャマはアイロンかけなきゃ。だってアイロンかけるとふわーっとして気持ちいいでしょ?」とにっこり笑って答えたのには心底驚いた。いくら「家事が好き」「家族のために」といっても、忙しい日々の中、なかなかここまではできないんじゃないだろうか。時間に余裕のある専業主婦でもパジャマにまでアイロンかける人はそうはいないだろう。彼女が「家事のエキスパート」として圧倒的な支持を得る背景には、こういう日々の積み重ねがあったんだなあと、すっかり感心してしまった。やはりすごい。ほんとのカリスマだわ。


......という話をオットにしたら、
「パジャマにアイロンなんかかけなくていいから、せめてボクのワイシャツにアイロンかけてくれ」
と言われた。なーんーでー??? あーたのシャツは形状記憶でしょうが! アイロンかけが死ぬほど嫌いだから、ぜーんぶ形状記憶シャツにしたのが、「軽やかでおしゃれな、わたし流の家事スタイル」なのよ、わかってないなあ。