鰻と格差

久しぶりに東京に出かけて映画を見てきました。
終映後、出てきたら13時。朝食抜きでおなかはぺこぺこ。いやそれにしても暑いね。
そうだ、こういう時は鰻だ鰻。鰻食べよっと。


渋谷センター街入り口近くの鰻専門店に入りました。
お品書きを見ながら、ううーん、鰻重だと一番安いのが1500円か。そのあと2000円、2500円、3000円。お吸い物お新香付き。お、このランチセットにすると鰻丼とサラダと冷や奴とお吸い物がセットになって1800円か。しかしなあ、一人でランチするのに鰻っていうだけでも贅沢品なのに、1800円はちょっとセレブ値段よね。考えちゃうなあ。ここはつつましく1500円の鰻重にするか。......でもねえ、今年になって鰻食べるの初めてだし、せっかく専門店に来てるんだし、2000円の鰻重でもいいよなあ。うううーん、1500円か、1800円のランチセットか、いっそのこと2000円の鰻重か......


と、果てしなく迷っていたら、隣の席でひとりで鰻重(たぶん2000円)を食べていた男性のケータイが鳴りました。


「はい、○○です。どうもお疲れさまです。それで、例の物件ですね、そう、駅前25坪のヤツ、お客様は言い値で買うっておっしゃってるんですよ。そうそう、諸経費込みで1億5千万でという話で......」




い、い、いちおくごせんまん???



どこの駅前の物件だか知らないけど25坪でいちおくごせんまんってすごいわね。しかも言い値で買うなんて。あなおそろしや。さすが東京。


そんなスケールのでっかい話を聞いていたら、百円単位で鰻重にするかランチセットにするか頭がはげるほど悩んでいた自分があほらしくなってきました。ええい、ここはいっちょう景気よく3000円の一番高い鰻重だ!暑気払いだ暑気払い!! 鰻でも柳でもなんでもいいから持ってこーい!!


――と思ったんだけど、今頃はコンビニパンをかじっているであろうオットが、毎晩毎晩エアコンのスイッチやお部屋の白熱灯をこまめに消してくれている姿が目に浮かび、理性を取り戻して1800円のランチセットにしておきました。えらいぞ、とこり。


でもね、出てきたランチセットの鰻は哀しいほどちっちゃくて、セットでついているサラダはレタスと缶詰のコーンを混ぜただけのしょうもないもので、ちっともお得感がないのでした。こんなことならちゃんとした鰻重を食べておけば良かった。鰻なんて年に何度も食べないのに。あああ後悔後悔。たった200円程度をけちったばっかりに。しょうがないか、これが私の身の丈か。これが格差社会っていうやつなのね(←違います)