「お裾分け」のココロ

「見たこと聞いたこと」4/16

もう10年ほど前のことになりますが、わたしの職場と同じビル内ににある某事業所に勤めていたTさんという、わたしより4、5歳年上の女性が、ケーキ作りが趣味なのか何なのか知らんけど、「差し入れ」と称して、しばしば手作りのケーキをくださってたんですよ。

あれはシフォンケーキのつもりだったのか。ビミョーに湿り気を帯びたどでかい黄色い物体で、嫌な油の味以外の味がなく、佐賀弁で言えば「どーでんなか」。

Tさんが「持ってきてあげた」という態度なので、こちらもそれに合わせてお礼なんか言ったりするわけですが、切り分けておいても誰も食べないし、かと言って捨てるわけにもいかないし、あれは迷惑という以外何者でもなかったなぁ。

いやあ、耳が痛いわ。
id:kuri2さんが書いているように、手作りのもの、特に食べるものをひとにあげる行為って、かなり微妙なものがありますよね。場合によってははっきりと「迷惑」な場合も。確かダウンタウンの松ちゃんは、自分の母親以外が握ったおにぎりは、それがたとえ彼女が握ったものであっても食べられないらしいし、他人と一緒につつく鍋料理が苦手、という人も多いし、他人を経由して口に入れるものに神経質になる気持ちはよくわかります。しかも、プロならまだしも、シロートが作った、たいしておいしくもないお菓子やら料理やら、一方的に持ってこられても困りますよね。


でも......。私、よくやるんですよね。自作のケーキとかパンとか、かなりの頻度でバイト先やご近所に持って行くんです。うちは夫婦二人なので、ワンホールのケーキとか一斤の食パンを焼いたところで持てあましてしまうし、どうせ焼くならたくさん作ってみんなで食べた方がいいかな〜なんて思って。


まあ、お裾分けのココロの一番大きな理由は「こんなの作ったの! 見て見て! 食べて食べて! ほめてほめて!」という自己顕示欲なんですよねえ。お菓子作りをはじめたばかりの頃は、ういろうみたいにねっちょりしたパウンドケーキや、酒粕みたいなニオイのする怪しげなパンなんかを焼いて得意げに「お裾分け」してたもんです。あれ、もらった人たち、ほんと迷惑だっただろうなあ。


いまは、そのころよりは少しはましなものを作るようになったとは思っているけど、それでも、「こんなの作ったの! 見て見て! 食べて食べて! ほめてほめて!」という気持ちは相変わらず。こっちは好きで勝手に作っているわけですが、もらう方は断れないものね。誰もが自分の作ったものを喜んで食べてくれるわけじゃないってこと、肝に銘じておいた方がいいかも。


だから、私から「見て見て! 食べて食べて! ほめてほめて!」と、一方的にお裾分けされちゃった方々、あの、お口に合わないこともあるでしょうし、無理して食べなてくれなくてもいいですからね......と、弱気になっちゃったりして。


でも、運良くお口にあった場合は......、


遠慮なく、心ゆくまで「食べて食べて! ほめてほめて!」


というわけで、以前焼いた、シュークリームの画像など。