下座

いけばなのお稽古でした。基本傾真型です。冷たい雨がそぼ降る五月らしからぬ肌寒い日でしたが、花材は涼しげ。ギガンジューム、アワ、芭蕉です。
先生と一緒に生けると「決まった!」と思えるような出来になるのに、帰宅して生け直すととたんにダメダメになるのはなぜでしょう。ちょっとした角度や長さの調節が、こんなにも全体像に影響するとは。


ところで、廃業が決まった船場吉兆の件。朝のワイドショーで、致命傷になった「使い回し」の詳細を報じていました。
最初は「焼き直してお出ししていた」と言っていた鮎の塩焼き、実際はラップしてレンジでチンしただけとか、デザート類は霧吹きで水気を与えて出していたとか、出るわ出るわ、節約主婦も顔負けの食材リサイクル。あ、加工し直して利用していたわけじゃないのでリサイクルじゃないな、リユースか。焼き魚をレンジでチンして出すなんて、私ん家でもやらないわよ。固くてパサパサでまっずいもん。不思議なのは、そんないい加減な料理を出されていても特別クレームが付かなかったということ。レンジでチンした鮎の塩焼きなんて明らかにわかるでしょう。老舗料亭なんて言っても、誰も料理を味わって食べていないということかしら。


学生時代も含めると10件近いレストランでアルバイトをしてきましたが、客に出した料理をそのまま使い回していた店なんて見たことないですよ。どの店も船場吉兆とは比べものにならないくらい無名で小規模でしたが、手つかずのデザート、サラダ、パン、豆皿にはいったおつけものにいたるまで、一度客席においた料理はもうそれっきりでした。個人営業のレストランなんて経営的にもカツカツなところばかりだから、食材のロスには頭を悩ませていたと思いますが、「使い回し」なんて発想、どこにもなかったと思います。今回の件で、「でも『使い回し』なんてどこのお店でもやっていることなんでしょう?」と思っている人も多いみたいだけど、やんないって。それは最低限の職業倫理でしょう。それがたっかい金とって使い回しやってた船場吉兆なんて、ほんと、料理屋の風上にも置けないサイテーの店だと思います。潰れて当然。


笑ったのが、「使い回しの料理は下座の客に出すようにしていた」という証言。せめてもの良心ということなのでしょうね。しかし、こういう接待料亭の場合、勘定を払うのは下座の客の方が圧倒的に多いはずなんですが。高い金払わされたあげくに使い回しの料理あてがわれて、踏んだり蹴ったりね。