簡易接客

近所のショッピングモールに入っているお気に入りのキッチングッズのお店にて。


自然光差し込む店内には感じのいいBGMが低く流れ、お鍋やフライパンやキッチンツールや食器が整然と並んでいてます。ブティックと違って「なにをお探しですか?」と店員に寄ってこられることもなく、きゃあきゃあ騒ぎながら走り回る子ども連れの客も少なく、落ち着いた雰囲気で心ゆくまで物色できます。1時間くらいじっくり見て回って、結局なにも買わずに店を出ることも多いのですが、後ろめたさを感じないのがこういう店のいいところ。キッチングッズマニアの私の癒しの空間です。


しかし、最近この癒しの空間に異変が。
この店の店員は今まで全員女性だったのですが、一ヶ月くらい前から若い男性店員が一人混じるようになりました。この男性店員が「声楽かなんかやってたんですか?」と聞きたくなるほどの「ええ声」の持ち主なんです。


ええ声なのは全然かまわないのですが、声自慢なのか、はたまた仕事熱心なのかなんなのか、やたらめったらそのええ声で「いらっしゃいませ!」と言いまくるのです。店内に誰かが入ってきたらもちろん「いらっしゃいませ!」。お鍋コーナーにいた人がカトラリーコーナーに移動しても「いらっしゃいませ!」。店外に出してあるガーデニング用品を見て、改めて店内に入ってきてら「いらっしゃいませ!」。よるとさわると「いらっしゃいませ!」。よくよく見ていると、店内の客の入れ替わりが全然なくても1分おきくらいに自動的に「いらっしゃいませ!」と言っています。


今日は月曜日で、店内にはそう多くの客はいなかったので、その「ええ声」のまあ響くこと響くこと。
私はゆっくりのんびりお買い物がしたいのに、タイマーのアラームのように「いらっしゃいませ!」が響くと、そのたびにぎくっ!!として持っていたワイングラスを落っことしそうになります。


なんだかなあ。
もっと店内の空気読めよと言いたくなります。キッチングッズの店では「元気で明るい挨拶」は求められていないと思うのだけど。清潔で整理の行き届いた居心地のいい空間があって、つかず離れずでいながら商品知識の豊かな店員がいて、会計が済んだときに感じよく「ありがとうございました」と言ってくれればそれでいいのです。居酒屋じゃあるまいし、やたらめったら「いらっしゃいませ!」とがなり立てられたんじゃのんびりほっこりした店の雰囲気ぶちこわし。「いらっしゃいませ!」と挨拶することで「俺、仕事してるからね!」とアピールしているのかもしれないけど、客の顔も見ずにやたらでかい声で挨拶だけされてもうるさいだけだっつーの。


あまりにも耳障りだったので、よっぽど店員にそう伝えようかと思ったのだけど、「元気な挨拶」はいちおう接客の基本だし、本人は仕事熱心なだけなのに「ちょっと、あなたのその挨拶、うるさいですよ」なんて言ったら、ちょー感じ悪い客になっちゃうよね。このお店には頻繁に通っているのに、気まずくなって来づらくなるのもるのもイヤだしなあ......などとぐずぐず考えて、結局言えずじまい。


そう言えば、ブックオフも客の顔も見ずに30秒おき、1分おきに「いらっしゃいませ!ようこそブックオフへ!」とがなり立てていて、あれもかなりうるさかったなあ。「いらっしゃいませ!」は客の顔をきちんと見て、笑顔で一回言えばそれでいいんだよ。客の顔も見ずに機械的に「いらっしゃいませ!」「いらっしゃいませ!」ってリピートされてると、なんか小馬鹿にされてるような気がするんだよなあ。


最近は「簡易包装にご協力ください」というステッカーをあちこちのお店で見るようになったけど、私は「簡易接客にご協力ください」というステッカーを貼って歩きたいわ。