真夏の断食大作戦! 最終日 これでいいのだ!

8月3日(日) 7日目 最終日
この施設は周りを木々に囲まれた緑豊かな別荘地にあるのだけど、緑が豊かな分、ムシムシも豊かで、夜になるとガやカやセミやカナブンやその他名前も知らないような羽虫やらが明るい部屋めがけて一斉にやってくる。もちろん網戸はきっちり閉めて電気虫除けも使っているけど、それでも何匹かは進入してきて、電灯の傘の周りを飛び回っている。昨夜もちょうどそんな風で、ムシムシが電灯にガシガシぶつかる音でなかなか寝付けず。考えてみれば、この断食中はほとんど宵っ張りで過ごしてしまった。早寝早起き適度な運動は健康の基本中の基本なのに、伊豆までわざわざやってきて部屋に引きこもってDVD三昧の宵っ張りじゃいけないよなあ。大反省。


7時起床。今日は退所の日なので、ざっと部屋を片づけ、荷物をまとめる。ちょうど一週間かあ。初日にこの部屋に入ったときは、こんな古くさい部屋で空きっ腹を抱えて一週間もすごすのか......と気が遠くなるような思いだったけど、過ぎてしまえばあっという間だ。


フロントで精算をすませる。
初回料 5,000円
宿泊料 15,000×6泊=90,000円
消費税 4,750円
合計 99,750円

スバラシイ明朗会計。施術のオプション料金や有線LAN貸出料・入湯税などいっさいナシ。最初だけ初回料5,000円とられるが、次回からは全く同じ内容が30%引きになる。この割引は家族も含まれる。リピーターに優しい制度ね。


朝食までの短い間に、ローリングベッドや遠赤外線などの物理療法を小一時間ほど。いやあ、この一週間くらい気合いを入れてごろごろした日々はなかった。毎日マッサージや遠赤外線やら磁気コイルやらで身体をほぐしたりあたためたり。しかもお風呂は温泉(狭いけど)。いつ罰があたってもおかしくないお気楽極楽生活だった。ただひとつの欠点は「食べられないこと」。まあ、わざわざ「食べない」ことを選んでここまで来たわけだけど。


朝食前に退所に際しての面接。
体重と体脂肪を測定する。体重はスタート時から1.5kg減。体脂肪率は-3%だった。
1.5kgかあ。かなりビミョー。絶食日×1kgぐらいは減るときいていたので、最低でも3kgは減ると思っていた。1.5kgだったら誤差の範囲じゃない? 3日も断食して、食べるようになってからもほとんどお粥ばっかりだったのに?


と先生に言うと、「ここにいる間の体重の増減はあまり問題じゃないんです。身体から老廃物が出て、いままでよりずっと「痩せやすい身体」になっているはずです。実際ほかの入所者の方も、家に帰ってからの方が痩せたとおっしゃる方が多いですよ。とにかく体重さえ減ればいいというものではありませんしね。家に帰ってこれまでの食生活をどのように改善していくか、ですよ。それにとこりさんは、こちらに来る前から徐々に食事量を減らしていらしたということですから、身体がすでに省エネ運転モードに入っていて明確な変化になって現れなかったのでしょうね。数値上は思うように変化がなかったかもしれませんが、見た目は明らかに違いますよ」と言ってくれた。確かに、自分で言うのも何だけど、あごのあたりがかなりシャープになって、肌もしっとりつやつ、目の輝きや髪の毛のツヤも全然違う。それになんといっても、お腹のあたりの軽快感! 吐く息がきれいになったような、スッキリした感じがある。これが体内浄化ってこと? 体型の変化は一時保留として、「美人度」はちょっとあがったと思うぞ、えへへ。「でも、昨日『おばあさん』って言われちゃいましたけどね」と軽く皮肉を言ったら、先生は「いや、ほんっっっとに申し訳ない。お詫びのしようもありません」とまたしても平謝りだった。あらら、いぢめちゃった。


そして食生活指導。断食後は身体も味覚も敏感になっているので、しばらくは濃いめの味付け・油料理は避けること。甘いもの、特に白い砂糖を使った料理やお菓子も避けましょう。カルシウム補給に心がけましょう。適度な運動を心がけること。その気があれば玄米に切り替えることをおすすめします――とのこと。


でも、言われるまでもなく揚げ物やこってり料理はしばらく食べないだろうと思う。甘いものもそんなに欲しくないなあ。「我慢する」じゃなくて「欲しくない」んだよね。不思議なことに。断食中はとにかく寝ても覚めても食べ物のことばかり考えていて、トンカツに焼き肉にイタリアンにフレンチに中華にお寿司に......と、とにかくありとあらゆる美食を妄想していたのだけど、第一回の回復食で玄米粥の重湯をすすったとたんに、「他はなんにもいらない! これだけでいい!」と思ったのだ。たった一杯の重湯だったけど、しっかり甘く香ばしく、優しく胃を温めてくれて、身体の隅々まで行き渡っていくあの感じ。そうそう、これが「食べる」ってことなのね、「生きる」ってことなのね、と哲学チックなことまで思ってしまった。重湯やお粥や、ただ出汁で煮ただけのジャガイモやお麩があんなにおいしく感じられるんだもの。わざわざ高カロリーなトンカツや焼き肉を食べなくても、これでもう十分!っていう気になった。これでいいのだ!(追悼 赤塚不二夫


考えてみれば、いままで何度となくダイエットをしてきて5,6kg単位の増減を繰り返してきたが、いつも頭の中では「あれが食べたい、これも食べたい」という飢餓感があって、その飢餓感を「我慢してる」「耐えている」と自己陶酔してなんとか乗り切っている、それが私のダイエットだった。その我慢がぷつっととぎれたときに、理性の欠如した食生活を繰り返し、体重の増加と自己嫌悪に悩む......その繰り返しだった。


だけど、この断食を終えてからは「食べたい食べたい食べたい」という慢性的な飢餓感がきれいさっぱりなくなったような気がする。あれもこれも、という食への執着がびっくりするくらい弱くなった。最初に重湯をすすったときみたいに、ゆっくりじんわり身体を満たしていく、あの充実した満腹感が味わえるのなら、茹でた野菜に塩かけただけでも十分だわ。3日の断食でリフレッシュされた味覚は、脂や砂糖やマヨネーズがなくても、きちんと素材の味をキャッチして「美味しい」と思わせてくれるから。

9時45分 朝食

ごま入り天然酵母パン(焼きたて) 豆腐ハンバーグ・大根おろしとエノキあんがけ 白身魚・ニンジン・カボチャのグリル 茹でブロッコリー ワカメと青菜のスープ 千切り野菜のサラダ 牛乳寒天フルーツトッピング 約630kcal


入所前からとても楽しみにしていた最終日の豪華ブランチだけど、一目見た瞬間「ムリムリムリ、こんなに食べられない!」と思ってしまう。パン3切れとかいま絶対無理。この半分でいい。案の定、ゆっくりゆっくり時間をかけて食べても、豆腐ハンバーグとお魚は半分しか食べきれず、パンは一切れしか食べられなかった。それでも、「もう夜までなんにも食べなくていいです」っていうくらいずっしりと満腹。お魚も豆腐ハンバーグも味付けは極薄だったけど、それでも「重い」と感じてしまう。信じられない。この淡泊な食欲と味覚、これがこってり大魔王のワタクシなのかしら?


「ごちそうさまでした」と言って、食堂を出ようとすると、昨日の「お孫さん」発言の女性が出てきて、「昨日はほんとうにごめんなさいね。これ、気持ちだから」と言って、焼きたてのクルミレーズンパンとおうちの庭で採れたキュウリとトマトを持たせてくれた。いえいえ、そんなお気遣いなさらなくても、もう全然気にしてませんから(ほんとはずいぶん引きずったけど)、とニコニコ笑って気持ちよく別れた。終わりよければすべてよしよ。


センターの方に送ってもらい、伊豆高原駅へ。「次回はぜひダンナさんといらしてくださいね」と言ってくれた。うん、今度はぜひ相棒づれで。一人じゃさすがに寂しいわ。


14時に帰宅。一足先に出張から戻っていたオットとあれこれ話しながら荷物の整理。「どうよどうよ、お肌ぴちぴちでしょ? ちょっとキレイになったでしょ?」とぐいぐい問いつめると
「うーーーん、ちょっとは違う、かな?」という返事。こういうときに「痩せてキレイになったよ、びくりしたよ。愛してるよとこり!」と言えるようなキャラじゃないのはわかっているので「断食効果」は自分の中だけで味わうことに。


留守中たまっていた用事を片づけて、この日は近所のマクロビレストランで夕食。このレストランはいままでも何度も利用していたが、お肉もお魚もないし、味付けは薄いしで、積極的に好きな店ではなかった。最近暴飲暴食が続いたからちょっとはヘルシーモードにしなくちゃね、とう時くらいしか来ない店だった。でも、今日はなにもかもがいちいち美味しく感じられて、ほんとうにいままで同じ店の同じ料理なのかと思うくらい。ぬか漬けなんかは「しょっぱい!」と食べられないくらいだった。いつもはオットよりずーっと先に食べ終わっていた早食いな私が、オットより時間をかけて食べても、玄米ご飯とおかずは完食できず。オットに食べてもらう。

つくば市マクロビオテックレストラン「りっつん」にて
揚げた蕎麦の実とワカメが入った玄米ご飯 千切りニンジンのサラダ 長なすの揚げ浸し テンペのフライ トマトとバジルのスープ ぬか漬け


さてさて、だらだらと実況中継してきた真夏の断食大作戦もついに終了。一週間、おつきあいくださってありがとうございました! 明日、断食体験についてのもうちょっとまとった感想を書いてみたいと思います。