もうイヤ! 母イヤ! パパイヤ! 

今週から10月一杯にかけて、オットは怒濤の出張デイズ。出張先で三泊して一日帰宅し、翌日からまた三泊して一日帰宅、というような日々が延々と続きます。数えてみたら、一月のうち丸一日家にいるのはわずか五日です。プチ単身赴任状態。そんなハードなスケジュールでも合間を縫って出張先近辺の山歩きをするというのだから、まあお元気なことで。亭主元気で留守がいい。


てなわけで、しばらく留守番の日々が続く私ですが、難しいのが食材の調整。なかなか計画通りに消費しきれない上に、うっかり生協で冷凍食品をいくつか注文してしまい、冷蔵庫は満杯状態に。一人だとほとんど料理もしないのに、こんなに食材余っちゃってどうしよう......と暗い気持ちになっていたところに、インターフォンから「宅配便でーす」の声。......なんか、すんげえ不吉な予感がするんだけど。


不吉な予感は的中。宅配便は沖縄の母からでした。でっかい段ボール箱に成人男性の頭ほどもあるおおきな青パパイヤが六個。モンキーバナナが一房。プチッ! 私の中でなにかが切れました。


二,三日前の電話で、「パパイヤが豊作なのよ〜。おくってあげるわね」と言うので、「ダメダメダメ! これから先しばらくはオットは出張続きでいないし、余った食材で冷蔵庫はぱんぱん。そもそも私はパパイヤそんなに好きじゃないから誰も食べる人いないのよ。送ってこられても困るから、絶対、絶対送らないでね。それよりお母さんの近所で喜んで食べてくれる人に分けてあげてよ。送料もったいないからね」
と、強くつよーーーーく言っておいたのに! なんで送ってくるかなあ!! どうするよ、こんなにたくさん!!


これまでも「たくさんとれたから」と、ゴーヤーやら島らっきょうやらパパイヤやら、尋常じゃない量の野菜を送ってきて、そのたびに私はあちこちに配り歩いてそれでも消費しきれずに腐らせてしまったこともしばしば。父と二人で始めた農園作業が順調で、その成果を見せたいんだろうし、なんだかんだいっていろいろと気遣ってくれる親心はうれしいんだけど、こちらにはこちらの食生活のペースがあります。はっきりいって迷惑。だけど、せっかく気分良く送ってくれているんだからと「こんなにたくさんありがとね。でも、うちはフーフ二人きりなんだから、こんなにたくさん食べられないのよ。野菜ならこっちのほうにも安くて新鮮なものがたくさんあるんだからもう送ってこないでね。送料がもったいないから。気持ちだけでうれしいから」と母の気を悪くしないようにやんわりとではありますが、野菜が送られてくるたびに、何度も何度も何度も!言っていたのです。なんで私の言うこと、聞いてくれないかなあ! ホント腹立つ!


あまりにも頭に来たので、すぐさま母に電話をして
「送ってこないでって、なんども言ってるじゃない! それでなくても明日から一人で留守番で食べきれない食材の処理に困っているのに! こっちにはこっちのペースがあるんだから勝手なコトしないでよ!」
とぶちまけてしまいました。
すると母は
「なんで、近所に配ればいいじゃない。余ったら冷蔵庫に入れておけば〜」とのんきな答え。
「うちの冷蔵庫はこんなでかいパパイヤが五つも入れられるほどのスペースはないし、ご近所だってあんまりしょっちゅうお裾分けしたら気を遣わせちゃうでしょう? 本土の人は青パパイヤなんて食べ方よく知らないんだし。だいたい私は小さい頃からがパパイヤ嫌いだって、お母さん、よく知ってるでしょう!」
と、ますますヒートアップする私。キツイ言い方にカチンと来たのか、
「あーそうですか! 悪かったわね! スミマセンでしたね! せっかくお父さんとお母さんが汗水垂らして苦労して作ったのにね!」
と今度は母が逆ギレ。ブチっと電話が切れました。


なんで? なんで私がキレられなければいけないの? 今の状況からすると私は「子を思う母の心を踏みにじった冷酷な娘」ってことになっちゃうの? わけわかんなーい。理不尽だ!!!!
納得いかないながらも、ここはひとつぐっとこらえてこっちが折れることにして、気をおちつけて電話をかけ直しました。


「送ってくれる気持ちはほんとうにありがたい。けど、ほんとうに気持ちだけで十分だから。お母さん達の野菜が食べたくなったらこっちから頼むから、それまでは送ってこないで欲しい。大切に育てた野菜を無駄にしてしまうのは心が痛むから」と、つとめて穏やかに優しく言って母の機嫌を直そうとしました。母はまだなんだかおもしろくない様子でしたが、とりあえずお互い仲直り、一件落着ということで電話を切ったのですが、おもしろくないのは私です。なんで私が謝らなきゃいけないのよ。頼んでもない野菜を送りつけてきて、こっちのペースを乱しているのはお母さんの方じゃない。私は精一杯気を遣っているのにさあ。あの調子じゃ、これからもまたどんどん野菜送ってくるだろうなあ。


ほんとに肉親とは厄介なもの。遠慮がない間柄というのは気楽な部分もありますが、なにを言ってもなにをしてもいい、と思ってるところがあるので、相手に対する言動がストレートになりすぎます。
「こんなことを言ったら気を悪くするんじゃないかしら」
「こんなことしたら、迷惑かしら」
などと、他人には当たり前に働く配慮が肉親にはできないんだよね。コミュニケーションが円滑なときはいいんだけど、いったんぶつかると、他人とトラブった時以上にギスギスするし修復も難しい。はあ、疲れるよ......。


それにしても、どうするよ、このパパイヤ......。嫌いだけど、せっかくだからパパヤーイリチーにして一個くらい食べようかと思っていたけど、頭に来たんで、もう絶対食べたくない。誰か、沖縄直送の青パパイヤ、いりませんか〜? うちまで取りに来てくれればぜーんぶタダで差し上げますよ!