マンモスかなP アトピー史(3)

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ステロイド、上手に使えば怖くない」というお医者さんの言葉に従って、言われたとおり湿疹がひどくなる前にステロイド軟膏を塗り、まめに保湿、熱いシャワーなど肌に刺激を与えるものはなるべく避けるという、ごく通り一遍のスキンケアをしていました。


ただそれだけのことですが、私のアトピーはそれから次第によくなってきたのです。毎日の水仕事があるので手荒れはなかなか改善されず、マニキュアが塗れないのは相変わらずですが、人目に触れる箇所が真っ赤にただれるほどのひどい状態はなくなりました。「かゆくて眠れない」という苦しさからも解放されました。季節の変わり目に手足に湿疹ができますが、一週間くらいステロイドを塗ればよくなります。今回、このエントリを読んだ知人から「アトピーだったの?気づかなかった」と言われるくらいですから、10年前、人目が気になって外に出るのもイヤだった状態からは劇的に改善と言ってもいいでしょう。


「……をしたから良くなった」「……が効いた」という明確な治療法にめぐりあったわけではなく、年を経るごとにちょっとずつ良くなっていったのです。なぜだろう。ステロイド使用を含める基本的なスキンケアはアトピーを患っている人なら当然実践していることでしょうから、私のケースは明確な治療法を求めている人には全然参考にならないと思います。ただ、これが肌質改善にはこれが良かったんだろうなと思い当たる点がいくつかあります。


小さい頃、私のアトピーに悩んでいた母は、お医者に「結婚するくらいの年齢になれば直りますよ」と言われたそうです。要するに女性ホルモンが安定してくると言いたかったのでしょうか。確かに結婚して専業主婦になったので、時間と心の余裕ができたのはいい方向に作用したと思います。一人暮らしの中小企業勤めのOLは経済的にも時間的にも厳しいものがあり、かなりストレスフルな生活でしたから。病院に行く時間がとれるようになったのも大きいですね。勤めていた頃は予約を取って病院に行くのも一苦労。そうしょっちゅう有休は取れないし、薄給の身には医療費だってバカになりませんでした。信頼できるお医者さんを見つけて(アトピーの場合、これが一番大変なのですが)、こまめに状態をチェックしてもらうのは大前提ですね。


でも、一番「これがよかったんだろうな」と思い当たるのは「満員電車に乗らなくなったこと」です。特に冬場の満員電車は皆が重いコートや毛糸のセーターを着ているので異様にほこりっぽい上に、換気は悪く暖房がんがん、コートを脱いだり着たりという温度調節もままなりません。アトピーがひどかった頃、一番かゆみがひどくなるのはきまって電車から降りた直後でした。今でも、用事で東京に出かけてラッシュの電車に乗る羽目になるとかゆみが出て湿疹が出ます。これは、私と同じくアトピー体質のオットも同じだと言っています。彼も、サラリーマンだった頃、つまり毎日満員電車で通勤しなければならなかった頃が一番症状がひどかったですね。


もうひとつ思い当たるのが、マメに掃除をするようになったことです。もともと掃除は苦にならないほうでしたが、一人暮らしの頃と主婦するようになってからでは、掃除にかける時間も方法も変わってきました。それまでは、ただ掃除機でたまったホコリを吸い取って、たまーに雑巾掛けをする程度だったのが、毎日「はたきをかけて」掃除をするようになったのです。恥ずかしながら、私はそれまではたきを使って掃除したことがなかったのですが、オットの家が「掃除はまずはたきから!」という家風?だったので、オットに教わって初めてはたきの使い方を覚えました。家中の窓を全開にして天井〜電球の傘〜棚の上〜家具〜家具の後ろと、上から順番にパタパタはたきをかけて、ゴミが下に落ちてきた頃に掃除機で一気に吸い取って、仕上げに雑巾掛け。やってみれば簡単なことですが、みんな意外とはたき使ってないんじゃないかしら? 友達にきいてみても「はたきは使わないなあ」という人、けっこういますから。


はたきをかけるようになると、毎日きちんと掃除をしていても翌日には本棚や仏壇の上にはうっすらとほこりがたまっていることに気づき、「ほこりってけっこうすごいんだな」と実感します。今のマンションに引っ越してきて、フローリング中心の生活になったのも「ほこりをためない」生活には良かったと思います。ベッドは使っていないので、お布団が出しっぱなしの状態もなし。満員電車の件もそうですが、私の場合、アトピーの誘発要因はほこりだったんじゃないかと思います。寒い季節になると湿疹ができやすくなるのも、換気がおろそかになったり、着ているものが厚ぼったくなったりしてほこりっぽくなるじゃないかしら?


それから、お風呂。これはどこの皮膚科に行っても言われたことですが「ゴシゴシやらない」のが大切。私は癇性なタチで、なんでもアワをぶくぶくたててゴシゴシやらないと「洗った!」という気がしないのですが、ボディソープをふんだんに使ってゴシゴシやるのは体の脂分を奪ってバリア機能が弱まるため、敏感肌の人には良くないんだそうです。これは髪の毛も同じ。「毎日泥まみれになって働いてるわけじゃないんだから毎日ゴシゴシやる必要ないのよ。普段はお湯で洗い流すだけ、2,3日に一回、やわらかいタオルに石けんをつけて優しくこすればいいんだから」とのこと。体にかけるお湯はシャワーはダメ。浴槽にお湯を張ってそこから使うようにとのこと。シャワーは水勢が強くカルキ分も高いので肌には高負担なんだそうです。私は髪が長いので、髪の毛は毎日洗いますが、体はくみ置きのお湯とタオルだけ。2,3日に一回、石けん(ボディソープじゃなく)でゴシゴシです。髪の毛用も体用も、天然素材の低刺激のものを選ぶのは言うまでもありません。ほら、あのリンスインシャンプーというやつ、あれはダメ〜〜。旅行に便利なので使っていましたが、あれを使うとてきめんに肌が荒れますね。シャンプーだと「メリット」もサイアクでした。


以上が、私のこれまでの経験から「これがよかったのかも」と思い当たるポイントでした。


私はたまたま運が良かっただけかもしれません。これから生活が変わってくるに従って、またひどいアトピーがぶり返すかも。だから「こうするといいよ!」と明確なアドバイスはできないのですが、おすすめは、ほこりをためないこと。ゴシゴシやらないこと。マメに掃除すること。それからなにより大事なのが「心をゆったり持つこと」です。肌がひどい状態だと、思考がどんどんネガティブになってしまうけど、大丈夫。大丈夫だよ! 私はアトピーだったし、小太りだったけど(これは現在進行形)、ちゃんとパートナーに巡り会うことができたよ。病気なのはあなたのせいじゃないんだからね。心まで病気にならないように。